著者
菊地 礼 Rei KIKUCHI
出版者
国立国語研究所
雑誌
言語資源活用ワークショップ発表論文集 = Proceedings of Language Resources Workshop
巻号頁・発行日
no.3, pp.288-297, 2018

会議名: 言語資源活用ワークショップ2018, 開催地: 国立国語研究所, 会期: 2018年9月4日-5日, 主催: 国立国語研究所 コーパス開発センター本発表は分類語彙表番号を付与した現代日本語書き言葉均衡コーパス(BCCWJ)を用いて収集した比喩表現データを分析・考察する。中村(1977)『比喩表現の理論と分類』によれば直喩の指標は7類82種359号と多岐にわたる。しかし,直喩の典型である「よう」以外の分析はなされていない。本発表ではコーパスを用いた網羅的な用例収集を行い,分析に耐える量を確保する。その一例を本発表は動詞「感じる」によって示す。「感じる」は「AガBヲ」「AヲBト」「AヲBデ」等の10の構文を作るが,「AニBヲ」「AヲBニ」等の8つの構 文で比喩を表わすことが可能である。しかし、直喩と認定できる例はその中から限定される。これは「感じる」が比喩指標として機能することが例外的事例であることを意味する。モダリティ形式としての文法化が比喩指標には求められるが、「感じる」は特定の構文環境においてのみ不完全ながら文法化を果たし、比喩指標と同様の機能を得る。