著者
譚 仁岸 Renan TAN
雑誌
神戸女学院大学論集 = KOBE COLLEGE STUDIES
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.79-93, 2019-12-20

本稿は有島武郎が一九二二年に発表した「宣言一つ」及び関連テキストを再読することを通して、「知識階級」と「第四階級」の階級移動の問題を再検討し、新たな理論的資源を援用して知識人の持っている「文化資本」の権力性と階級性を大正時代の文脈に沿いながら論じたものである。知識階級の啓蒙的暴力を反省することにおいても、過度な政治化と過度な脱政治化との間の選択においても、複数の価値的衝突と正義のアポリアに面する際の政治的実践においても、有島武郎にはまだ批判的可能性が内蔵されている。それは今日において政治思想の視点からも思考し続けるに値するものである。