著者
栗 躍崇 リツ ヤクスウ Ritsu Yakusu
雑誌
書道学論集 : 大東文化大学大学院書道学専攻院生会誌 (ISSN:13489313)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.69-78, 2014-03-31

『燕下都(上)』(河北省文物研究所編、一九九六年八月文物出版社刊)八四一頁に載せる一件の燕国古璽の印文に対して、後年に発表された釈読が気になった。その璽印は、河北省武陽台村で採集された。陽文の印面は長細形で枠がなく、印体には八稜柱形の柄がついている。柄の末端はやや太く、一側面に半円形の環鈕がある。『燕下都(上)』では印文を釈読していない。印の高さは10.7cm、縦:4.4cm、横:1.1cmである。『燕下都(上)』の839頁(図版四八四)には、印影と印鈕の図版があり、『燕下都(下)』図版-七九(六)には、カラーの写真図版を載せている(図一)。本論文は、『古璽彙編』と『古陶文彙編』を中心に、戦国文字類に関する文献や書蹟を考査し、『燕下都(上)』841頁収載の河北省武陽台村で採集された燕国長細形璽印一件の印文を、新たに釋読しようとするものである。釈読には、文字を分解した後、再度組み合わせ、単字の場合は、燕国や同時代の他国の文字を参照する方法を用いる。