著者
徐 強 SINGH Sanjay Kumar
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

高い水素含有量を持ち、燃料電池用水素源として高い可能性を持つ水和ヒドラジンに注目し、水和ヒドラジンの触媒による選択的完全分解反応で、室温という温和な温度において、PtNi及びIrNi合金ナノ粒子触媒を用いて制御可能な条件下で水素ガスを発生させることができることを見出した。PtNi,IrNi二成分合金ナノ粒子触媒の組成を調節して、触媒活性・水素生成選択性評価を行ったところ、それぞれ100%水素選択率を示す組成領域を明らかにした。PtNi合金ナノ粒子触媒ては、Pt含有量が7-34%の幅広い領域において、100%水素選択率を示す。IrNi合金ナノ粒子触媒に関しては、Ir含有量が5-10%の領域において、100%水素選択率を示す。放出ガスの体積測定のみならず、質量分析におけるH_2/N_2比(2.0)及びアンモニアに起因する^<15>NNMR信号がないことから、これらの条件下ではヒドラジンの完全分解反応H_2NNH_2→N_2+2H_2が選択的に進行していることが確認された。TEM観察により、PtNi,IrNiナノ粒子の平均粒径は約5nmである。XPS測定により、それぞれPtNi,IrNiの二成分合金ナノ粒子となっていることがわかった。これら合金ナノ粒子が高活性・高選択性を有することは、触媒表面に両成分とも存在し、完全分解・水素生成に有利なヒドラジン結合活性化に寄与していることを示している。水和ヒドラジンは、液体であるため移動型燃料タンクへの充填が容易であり、既存の液体燃料用供給・貯蔵インフラ設備が利用可能という大きなメリットを有する。さらに完全分解によって水素と窒素に分解するため、生成物回収・再生が不要である。