著者
SODHI Navjot S. ADLARD Robert D. 永田 尚志 KARA A. U.
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.65-67, 1999
被引用文献数
5

渡り鳥は,渡りのストレスで血液内寄生虫に感染しやすくなったり,越冬地でも感染する可能性があるため,留鳥よりも感染率が高いと考えられる,利根川および霞ケ浦湖岸のヨシ原において捕獲されたホオジロ,ホオアカ,カシラダカ,アオジ,シベリアジュリン,オオジュリンの6種類のホオジロ(<i>Emberiza</i>)属から血液を採取し, <i>Haemoproteus</i> spp, <i>Trypanosoma</i> spp, <i>Splendidofilaria</i> spp, <i>Plasmodium</i> spp,<i>Leucocytozoon</i> spp の5種類の血液内寄生虫(原虫)の感染率を調べた.血液を採取した352個体中,血液内寄生虫が感染していたのは,カシラダカ,アオジ,オオジュリンの各1個体であり,全体の0.8%にすぎなかった.カシラダカとオオジュリンでは配偶子母細胞や分裂前体をもった成熟した原虫が見つからなかったので種名まで同定できなかったが,アオジに感染していたのは <i>H.coatneyi</i> であった,<i>Emberiza</i> 属においては,渡りをする種が留鳥性の種より血液内寄生虫の感染率が高いという予測は支持されなかった.本研究と前報(Sodhi <i>et al</i>.1996)によって,日本に生息しているホオジロ属では血液内寄生虫の感染率が低く抑えられていることがわかった.ホオジロ属の血液内寄生虫感染率がどのようなメカニズムで低く抑えられているかはわからない.