著者
皆川 純 SWINGLEY Wesley SWINGLEY Wesley Douglas
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

外国人特別研究員の帰国前倒しに伴い,実質研究機関は4-6月の3ヶ月となったため,主に前年度の成果のまとめが行われた.前年度プラシノ藻Ostreococcus tauriより初めて単離に成功した光化学系I超複合体のタンパク質組成は,光化学系I反応中心サブユニットに加え,緑色植物で光化学系I専用の集光アンテナとして機能するLHCIが確認された.さらに,高等植物で光化学系II専用の集光アンテナとして知られるモノマーLHCIIであるCP26/CP29も確認された.これらCP26/CP29は緑藻ではステート遷移機構により光条件により,光化学系I,光化学系IIの間を行き来することがわかっていたが,さらに祖先型のプラシノ藻では光化学系I専用のアンテナとして機能していることが明らかとなった.モノマーLHCIIはもともと光化学系I固有の集光アンテナであったが,植物の進化に伴い陸上での生育を支えるため,まずは光化学系IとIIの間を行き交い,やがて高等植物では,光化学系II固有に集光アンテナとなったと考えられる.また,プラシノ藻の光化学系の特徴として,陸上植物では普遍的に見られる赤外域での蛍光(レッドクロロフィル)が存在しないこともわかった.レッドクロロフィルの役割についてはまだ確立されていないが,植物が陸上で生存していくために励起エネルギーを保持しているものと考えられているが,プラシノ藻は,その必要がない光合成の型式を現在でも保存しているものと考えられる.