著者
阿部 周平 Shuhei Abe
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2013-03-25

現在、世の中には数多くのゲームが存在している。これらゲームはインタラクティブ性、マルチメディア性、コンテンツ性という3つの特性をもっている。以上の特性をもつものを本研究ではインタラクティブマルチメディアコンテンツ(以下IMC)と呼ぶ。IMCの典型例であるゲームには様々なジャンルがあり、例えば恋愛アドベンチャーゲーム(以下恋愛ADV)がある。IMCの品質においては、面白さのような感性品質が重要となる。感性品質はユーザーの感性によって決定される品質である。感性品質を高めるためには感性品質を評価する必要がある。感性品質に関する既存研究は棟近らの「感性品質の調査に用いる評価用語選定の指針」と阿部の「インタラクティブマルチメディアコンテンツに対する感性品質の評価手法の提案」の2つがある。しかし、棟近らの手法は物理特性があるものの評価を対象としているため、IMCの評価は行えない。阿部の手法はIMCの評価は行える。しかし、阿部の手法では静的な印象が得られる感性品質の評価しか行えず、「ヒロインの態度が素っ気ないから可愛らしいへ変化する」のような変化する感性品質の評価は行えない。本研究ではIMCに対する変化する感性品質の評価手法を提案する。本研究では変化する感性品質をTS感性品質と呼び、TS感性品質を評価するためにモデル化を行う。提案するのは時間経過による変化をモデル化したタイムストリーム図と変化の種類をモデル化した変化パターンである。タイムストリーム図はTS感性品質の元となる感性品質とTS感性品質の関係などをモデル化した図である。変化パターンは変化の種類をモデル化したもので、ギャップパターンと増加パターンの2つを提案している。提案したタイムストリーム図と変化パターンを用いてIMCに対する感性品質の評価手法を提案する。評価手法を被験者に使用してもらい、TS感性品質を抽出することができるかという点と、抽出したTS感性品質がIMCの感性品質の評価に有用なものであるかという点について検証を行い、本研究の有用性を示す。