著者
Stephanie DANIELS
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.505-509, 2004-11-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
27

ヒトにおいて、大脳皮質の嚥下機能にかかわる部位を同定する試みは、主として傷害実験の手法、すなわち卒中患者の責任病巣がどの部位にあるかをCTやMRIを使用して調べる方法に基づいて行われてきた。嚥下研究の領域にこれらのニューロイメージング技術が登場し応用されるまでは、嚥下障害の責任病巣は脳幹かまたは両側の大脳半球にあるという考えが一般的であった。しかし、ニューロイメージング技術の利用を通して、一側大脳半球の特定の皮質領域が嚥下動作に寄与しているという概念が確立されてきた。また機能のイメージング方法を用いることにより、健康成人における嚥下運動の局在の研究が進み、テント上の領域が重要であることが確認されている。多様な画像技術を駆使して、嚥下運動にかかわる特定の部位が同定され、それには島回も含められる。島回、特にその前方部は嚥下運動を伝達する多数の皮質および皮質下領域と密接に双方向性に結びついている。島回の前方部の障害によって嚥下障害が引き起されるが、その機序としてanterior efferent cortical pathwaysおよびまたはvisceral sensorimotor pathwaysが妨げられるたあとの仮説がある。動物実験、卒中患者が示す病変部位の研究および健康成人における機能イメージング研究は嚥下機能の皮質局在説を支持している。大脳皮質による嚥下機能の情報の伝達と調整は、ヒトが安全にかつ機能的に嚥下を遂行するために求あられる十分な生理学的および生化学的特性を維持していくのに非常に重要である。