著者
Sud Y.C. Mocko D.M.
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
気象集誌 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.335-348, 1999-03-26

ISLSCP Initiative-Iデータを用いた全球土壌水分プロジェクトでの評価で、SSiBモデルによるロシア小麦地帯(RWB)での融雪が観測と比べて非常に遅れ融雪水の浸透が極端に少ないことが示された。さらに、融雪水の多くが土壌水分増加ではなく流出となった。この欠点はSSiBの雪モデルと土壌層のモデル化の不十分のためであった。本研究では独立の雪層を考慮した新雪モデルを採用している。雪は入射太陽フラックスを吸収・射出し冬と融雪期を通じて雪温・地温に影響する。ISLSCP Initiative-Iデータによる評価で、新雪モデルはRWB域での融雪が2〜3週間早くなり、融雪期の初期に土壌が融け、より多くの融雪水が土壌に浸透する。このように新モデルは土壌水分やボルガ河流出をより現実的に再現する。融雪の遅れ(1〜4週間)の理由として、(1)密な森林での衛星による雪観測の不正確さ、(2)モデリングの仮定、例えば雪の年齢の影響を無視していることや雪による太陽放射吸収の簡単化のために雪面温度と平均気温の区別が不適切になること、(3)ISLSCP気温データの低温バイアスの可能性、が考えられる。