著者
TROMOVITCH Philip
出版者
同志社大学ハリス理化学研究所
雑誌
同志社大学ハリス理化学研究報告 = The Harris science review of Doshisha University (ISSN:21895937)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.222-228, 2020-01

思春期前の自慰行為の頻度や性行為、初めての恋愛感情や性的欲望を経験するなど、早期の性的要因が、利他主義や心の温かさなど、向社会的な性格を予測する変数であるかどうかを見るために試験的な分析が行われた。データはMultinational Life Experience and Personality Project (MLEPP) の主要な第一段階で、18歳から59歳の日本人の成人2000人以上のサンプルから得られたものである。2つの家庭的要因と調査時の年齢をコントロールし、階層的逐次多重回帰分析することでリサーチクエスチョンに答えるべく分析した。日本人女性に関しては、オーガズムの未経験が利他主義や心の温かさが低くなる予測要因である一方、早期の恋愛感情や性的欲望の経験は、高いレベルの予測要因であった。日本人男性の間では、オーガズムの経験のないまま最初の射精を経験した年齢は、利他主義と心の温かさが低くなる予測要因であった。女性の分析結果と同様に、早期の恋愛感情の経験は高いレベルの予測要因となった。最初の性的欲望の経験、自慰行為の頻度や性行為と利他主義との関連はみられなかった。しかしながら、思春期後の性的変数は心の温かさの予測要因となっていた。この男性のデータから得られた予想に反する調査結果をもとに暫定的な考察を述べる。