著者
Tatsuhiko Abe
出版者
Japanese Association for Oral Biology
雑誌
Journal of Oral Biosciences (ISSN:13490079)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.125-151, 2004 (Released:2005-08-19)
参考文献数
122
被引用文献数
4

ワニは, 歯の植立様式に関して魚類や両生類から哺乳類への移行段階にあるとして, 系統解剖学的に重要な位置付けがなされている。 したがって, ヒトの歯周組織の機能を形態学的に究明する研究の一端として, ワニCaiman crocodilusのセメント質の構造を光学顕微鏡ならびに透過電子顕微鏡で観察を行った。ワニのセメント質は, セメント質内層と外層の少なくとも二層に層区分される。 また, 石灰化度はセメント質外層に比して内層のほうが高い。 両層とも下地をなす線維は, 基本的には非固有性線維を下地としている。 さらに, セメント質には多くの細胞が含有され, それらは間葉系のセメント細胞のほかに上皮性のマラッセの残存上皮である。 ワニのセメント質は, 全般的に未分化な特徴もみられるが, 歯の支持機構としての基本的な構造をすでに獲得している。