著者
内山 智裕 西嶋 亜矢子 Tomohiro Uchiyama Ayako Nishijima
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.12-23, 2022-06-21

本論では,米国におけるとうもろこし・大豆の現地調達から輸入までを担う日系商社の企業行動と経営戦略の展開を,2010年以降の米国における穀物流通業の構造変動とともに考察した。分析方法は,入手可能な媒体における日系商社の米国穀物事業に関する情報(プレスリリースや新聞・雑誌記事など)から各社の動向を整理するとともに,その情報を元に各社の担当者に聞き取り調査を行う方式をとった。また,生産者の事情・意向を確認するために,とうもろこし・大豆生産者でアイオワ州立大学エクステンション職員にインタビューを実施した。その結果,1)各社とも,米国内陸部の集荷網を拡充しており,長期的関係の構築,生産地の情報収集,コスト削減,Non-GMO対応,といったメリットがあること,2)穀物集荷業の構造再編が進む中で日系のシェアが伸長していること,3)生産者が農場内貯蔵施設を拡充し,集荷業者に対する交渉力が向上していること,4)中国が米国内陸の集荷網に進出する可能性は低いが,価格上昇圧力につながる可能性があること,などが明らかになった。一方,穀物メジャーと日系商社の戦略を比較すると,穀物メジャーは世界的に事業を展開し,加工部門から利益を獲得しているのに対し,日系商社は日本の国内市場での穀物販売に依存している。そして,日本における少子高齢化に伴うマーケット縮小に加え,日本の港湾・飼料業界の再編の行方も不安材料となるため,1)資材や加工分野の拡大,2)日本以外での収益性のある販売の確立が,日系商社による穀物ビジネスの今後の課題となると結論づけた。
著者
田村 夢果 内山 智裕 井形 雅代 Yumeka Tamura Tomohiro Uchiyama Masayo Igata
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.81-86, 2022-09-16

新型コロナウイルス感染症は,花き業界にも多大な影響を与えた。特に2020年3~5月の第1波では,業務用需要が大幅に減少した結果,大量の花が廃棄され,「フラワーロス」と称された。しかし,小売店での売れ残りに伴うロスや,出荷規格から外れたことによるロスなど,花の廃棄の問題は以前から存在している。本論は,小売業者による花の廃棄問題への対策の内容を解明し,コロナ禍における状況変化を明らかにすることを目的とした。そして,花の廃棄対策に積極的に取り組む小売業者3社の事例分析により,以下の2点を明らかにした。①発生を抑制・減量化するために,規格外品の販路の開拓,サブスクリプションサービスやオンラインD2C販売など流通の短縮化,販売数の確定や正確な予測などに取り組んでいる。②対策を行ったうえでも発生するロスを活用して,堆肥化などの新たな製品にリサイクル・アップサイクルしている。また,コロナ禍におけるフラワーロスへの関心の高まりが,広い範囲での花の廃棄削減に効果を発揮していることも明らかにした。