著者
Tongjit KIDCHOB 木村 俊作 今西 幸男
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.192-199, 1998-04-25 (Released:2010-03-15)
参考文献数
10
被引用文献数
6 5

マイクロカプセルにポリ (N-イソプロピルアクリルアミド) (PNIPAAm) を組み込んだ2種類の異なる温度応答性マイクロカプセルを調製し, 親水性薬剤モデルの温度応答性放出を調べた. まず, ブロックポリペプチドマイクロカプセルの表面に開始剤を固定化し, N-イソプロピルアクリルアミドの重合を行って, マイクロカプセル表面にPNIPAAmをグラフト化したマイクロカプセルを調製した. PNIPAAmの下限臨界溶解温度より高温側では, マイクロカプセルの表面に密度の高いスキン層が形成され, 内包した薬剤の放出が抑制されたのに対し, 低温側ではスキン層の消失により放出が促進された. また, この薬剤放出の温度変化に対する応答は狭い温度範囲で素早く起こり, また, その応答は可逆的であった. もう一つの温度応答性マイクロカプセルとして, PNIPAAmゲルを内部に充填したポリ乳酸マイクロカプセルを調製した. このシステムでは, 下限臨界溶解温度より高温側ではゲルの収縮により含浸された薬剤の放出が促進された. また, マイクロカプセルからの放出は温度に応答して素早く起こり, 放出量はマイクロカプセル内部の空孔のサイズと充填したゲルの量により調節可能であった. このように, 生分解性ポリマーで調製したマイクロカプセルに, 温度応答性ポリマーであるPNIPAAmを組み込む方法を変えることで, 負の温度応答性および正の温度応答性を示すマイクロカプセルシステムを構築できた.