- 著者
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宮本 徹
Toru Miyamoto
- 巻号頁・発行日
- vol.57, no.4, pp.247-260,
グルタチオンS-転移酵素(GST)はミクロソーム酸化酵素であるチトクローム P450 と並んで生物体に広く存在する抱合酵素である。これは生体内で生合成や薬物の代謝分解に於いて重要な役割を演じている。α,μ,π,σ クラス GST では,チロシンがグルタチオン(GSH)のプロトンを引き抜き,GSH 抱合体を形成する。一方,昆虫の θ,δ,ε クラス GST では,セリンが近傍のペプチド結合のカルボニル基と相俟って,GSH からプロトンを引き抜き,GSH 抱合体を形成する。植物や大腸菌の GST は昆虫と同じセリンのシステムで GSH を活性化しているようである。本稿では,この GST の触媒機構と多様な機能を計算化学による必須アミノ酸残基の立体配座の視点から解説し,薬剤開発と抵抗性発現のイタチごっこの解消の足がかりを提案する。