著者
Sanae IECHIKA Toshinori ISHIKUMA
出版者
日本学校心理学会
雑誌
学校心理学研究 (ISSN:13465732)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.139-157, 2021-03-31 (Released:2021-11-19)
参考文献数
41

本研究の目的は,特別な援助ニーズがある子どもたちのためのコーディネーション委員会の機能が,教師による生徒への心理教育的援助サービスにどのような影響を与えるかを明らかにすることであった。そこで中学校教師432名を対象に質問紙による調査を実施した。調査の内容は,「問1:コーディネーション員会の機能」,「問2:学校の問題に対する当事者としての意識」,問3:心理教育的援助サービスに対する教師の意識」,「問4:教師の心理教育的援助サービス」であった。その結果,コーディネーション委員会の4つの機能(①個別のチーム援助の促進機能,②コンサルテーション及び相互コンサルテーション機能,③マネジメントの促進機能,④学校・学年レベルの連絡・調整機能)のうち,①個別のチーム援助の促進機能を除く3つの機能が,教師の「学校の問題に対する当事者としての意識」と「心理教育的援助サービスに対する教師の意識」に正の影響を与えていることが明らかになった。また,コーディネーション員会の機能は,「学校の問題に対する当事者としての意識」と「心理教育的援助サービスに対する教師の意識」を通して教師の心理教育的援助サービスに正の影響を与え,コーディネーション委員会の機能の中で,①個別のチーム援助の促進機能と④学校・学年レベルの連絡・調整機能は直接的に教師の心理教育的援助サービスに正の影響を与えることが明らかになった。本研究では,コーディネーション員会(生徒指導委員会,教育相談部会,校内委員会など)を取り上げた。これらの委員会では,教師とスクールカウンセラーが,主に特別な援助ニーズのある生徒の問題に関する状況について話し合い,その生徒をどのように援助していくかを話し合う。つまり,コーディネーション委員会は,二次的援助サービス・三次的援助サービスが必要な生徒への援助サービスを向上させることを主としたコンサルテーション・相互コンサルテーション及び連絡・調整の場である。しかし本研究の結果が示すように,コーディネーション委員会の機能は,いじめ,不登校,発達障害などの二次的援助サービス・三次的援助サービスを向上させるだけでなく,開発的ニーズをもつすべての生徒に対する一次的援助サービスを向上させる可能性がある。コーディネーション委員会が定期的に開催されることで,授業の改善や生徒へのサポートなど,教師の心理教育的援助サービスを維持し,促進することで,チーム学校の心理教育的援助サービスが改善される可能性がある。特に日本では,教師が心理教育的援助サービスの主な提供者となっているため,心理教育サービスの提供者としての教師の成長は重要である。また,コーディネーション委員会への参加は,教師と専門スタッフ(スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなど)が,学校全体の心理教育的援助サービスをチームとして行うことを推進すると考えられる。今後は,公認心理師・臨床心理士・学校心理士などの資格を持つスクールカウンセラーが,コーディネーション委員会に定期的に参加するよう求めることが必要である。