著者
Tsunetaka Ohta
出版者
FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
雑誌
Trends in Glycoscience and Glycotechnology (ISSN:09157352)
巻号頁・発行日
vol.4, no.15, pp.99-105, 1992-01-02 (Released:2010-01-05)
参考文献数
43
被引用文献数
1 2

哺乳動物において、グルコースの摂取とその血漿中の濃度の維持は特異的なトランスポーターによって行われている。現在、2種類のグルコーストランスポーターの存在が知られている。Na+との共役によってグルコースを濃度勾配に逆らって能動的に輸送するNa+依存型グルコーストランスポーター (SGLTs)と、促進拡散型グルコーストランスポーター (GLUTs) である。これらのグルコーストランスポーターは、細胞の分化、癌化及び糖尿病等幾つかの疾病にも関与していると考えられているが、その機構は未だ明らかではない。分子生物学的手法の導入により、1985年に赤血球型グルコーストランスポーター (GLUT-1) のcDNAがクローニングされて以来、その後の5年間に5種類のGLUTと1種類のSGLTのcDNAがクローニングされた。これによって、グルコーストランスポーターのアミノ酸配列、細胞膜上での配置及び染色体上の位置など多くの事柄が明らかになった。今や、グルコーストランスポートの制御機構を分子レベルで研究することが可能になっており、研究は新たな局面を迎えようとしている。