著者
平島 真一 多田 教浩 三浦 剛 伊藤 彰近 ヒラシマ シンイチ タダ ノリヒロ ミウラ ツヨシ イトウ アキチカ Shin-ichi HIRASHIMA Norihiro TADA Tsuyoshi MIURA Akichika ITOH
雑誌
岐阜薬科大学紀要 = The annual proceedings of Gifu Pharmaceutical University
巻号頁・発行日
vol.60, pp.1-9, 2011-06-30

酸化反応は有機合成における最も重要な柱の一つである。しかしながら、従来の酸化反応は重金属を大量に使用しなければならない、廃棄物が大量に副生するなどの問題点を有しており、いわゆる“グリーンケミストリー”の概念に必ずしもそぐわないものがほとんどであった。一方、最近では安価で原子効率が高い分子状酸素を酸化剤として用いた触媒的酸化反応が報告されている。この方法は適当な触媒を用いた場合に、反応後に副生されるものが理論的に水のみであり、理想の酸化反応として注目を集めている。係る背景において、筆者らは分子状酸素を用いる酸化反応について研究を行い、紫外光照射下(<400 nm)、HBrやBr2のような触媒量の臭素源存在下、芳香環上メチル基やアルコール類から対応するカルボン酸への酸化反応の開発に成功した。また、臭素源として触媒量のMgBr2を用いることにより可視光照射下(>400 nm)でも同様の酸化反応が進行することも見出した。さらに、上記の光酸素酸化反応を連続するエステル化反応へ展開し、芳香環上メチル基から芳香族カルボン酸エステルへの効率的な直接一段階合成法を確立することにも成功した。