著者
吉本 裕史 YOSHIMOTO Hirofumi
出版者
名古屋大学国語国文学会
雑誌
名古屋大学国語国文学 (ISSN:04694767)
巻号頁・発行日
vol.113, pp.168-154, 2020-11-10

本稿では、擬態語から陳述副詞への変化が指摘される「きっと」の歴史的変化を考察する。先行論には述語形式との呼応を重視するものがあるが、本稿は歴史資料の用例に、呼応という意味的関係を見出すことは難しいとの見方を示す。そこで、文脈や統語条件を元に、出現期から近世後期までの「きっと」の意味に注目する方法をとる。結論として、人間の行為の様態を表すものが、事態に対する評価を表すようになる変化を経て、「きっと」は近世後期時点で陳述副詞的段階に至ることを指摘する。