著者
畠中 愛美 HATANAKA Manami
出版者
名古屋大学国語国文学会
雑誌
名古屋大学国語国文学 (ISSN:04694767)
巻号頁・発行日
no.113, pp.27-42, 2020-11-10

読み本系『平家物語』の一本『源平闘諍録』における源義経像について、まず従来指摘されている源頼朝・梶原景時との関係性による加筆・改変を確認した。その上で、巻八之下「一の谷・生田の森合戦の事」に見られる義経と季重の描写から、義経が他者と対立することを避ける人物として描かれているとし、兄弟関係から離れた箇所にも義経像にエ夫が見られることを指摘した。
著者
吉本 裕史 YOSHIMOTO Hirofumi
出版者
名古屋大学国語国文学会
雑誌
名古屋大学国語国文学 (ISSN:04694767)
巻号頁・発行日
vol.113, pp.168-154, 2020-11-10

本稿では、擬態語から陳述副詞への変化が指摘される「きっと」の歴史的変化を考察する。先行論には述語形式との呼応を重視するものがあるが、本稿は歴史資料の用例に、呼応という意味的関係を見出すことは難しいとの見方を示す。そこで、文脈や統語条件を元に、出現期から近世後期までの「きっと」の意味に注目する方法をとる。結論として、人間の行為の様態を表すものが、事態に対する評価を表すようになる変化を経て、「きっと」は近世後期時点で陳述副詞的段階に至ることを指摘する。
著者
樋口 千紘 HIGUCHI Chihiro
出版者
名古屋大学国語国文学会
雑誌
名古屋大学国語国文学 (ISSN:04694767)
巻号頁・発行日
vol.113, pp.11-26, 2020-11-10

御伽雌子『横笛草紙』諸本のうち清涼寺本に、主人公横笛の出生譚がある。その中に、弘法大師が天竺に渡って三つの笛を得たとする笛説話があり、同説話は義経物の幸若舞曲や御伽草子にも見られる。そこで義経の名笛伝承を整理し、その中に『横笛草紙』の笛説話を位置づけることによって、『横笛草紙』の笛説話が義経物と関わって生成されたこと、横笛出生譚も同様に弘法大師の笛の成徳を語るものであることを示した。
著者
畠中 愛美 HATANAKA Manami
出版者
名古屋大学国語国文学会
雑誌
名古屋大学国語国文学 (ISSN:04694767)
巻号頁・発行日
vol.113, pp.27-42, 2020-11-10

読み本系『平家物語』の一本『源平闘諍録』における源義経像について、まず従来指摘されている源頼朝・梶原景時との関係性による加筆・改変を確認した。その上で、巻八之下「一の谷・生田の森合戦の事」に見られる義経と季重の描写から、義経が他者と対立することを避ける人物として描かれているとし、兄弟関係から離れた箇所にも義経像にエ夫が見られることを指摘した。
著者
中村 誠 NAKAMURA Makoto
出版者
名古屋大学国語国文学会
雑誌
名古屋大学国語国文学 (ISSN:04694767)
巻号頁・発行日
vol.113, pp.43-58, 2020-11-10

資料性に関しては、一部検討の余地は残るものの、近世後期の富士登山を知る好個の資料であること、近代的登山者像が現れていることを示した。文芸性については、叙景の特色、事実を描くことを越えた虚構性の問題等について論じた。また、従来登山記としてのみ読まれてきたとして、紀行全体の構造を通して読むことの必要性を指摘した。そしてそのことによって、登山記とは異なる紀行の相貌が現れることを示した。
著者
吉原 万里矢 YOSHIHARA Mariya
出版者
名古屋大学国語国文学会
雑誌
名古屋大学国語国文学 (ISSN:04694767)
巻号頁・発行日
vol.113, pp.90-76, 2020-11-10

機械に注目が集まった1930年代前後、人々は人造人間に強い関心を抱いていた。川端康成もまたそうした人々の一人であった。本稿では「青い海黒い海」「針と硝子と霧」「水晶幻想」等の作品において透明化する人間あるいはガラス化する人体の表象を繰り返し描いていることに注目し、身体が白昼夢の中で非人間化し、それがガラスという新しい物質と関連付けられる点に川端独自の問題意識があることを明らかにする。