著者
戸政 佳昭 Yoshiaki Tomasa
出版者
同志社大学大学院総合政策科学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review
巻号頁・発行日
vol.2, pp.307-326, 2000-12-20

本稿は、政治・行政学や公共政策論において一種の流行語となっているガバナンスという言葉が、流行のゆえに混乱をもたらしていると認識し、ガバナンスという言葉そのものについての整理・検討を行っている。言葉が引き起こす混乱は、その言葉が登場することとなった背景が整理されないままに使われることが原因になっていることが少なくないので、まずはガバナンスという言葉が日本の政治・行政学や公共政策論において浸透するに至った背景を6 つに分けて整理している。さらにこれらから、政治・行政学や公共政策論においてガバナンス概念を用いる意義・意味は「ガバメントからガバナンスへ」という文脈で発揮しうるものであるとしている。次 に、ガバナンスという言葉の具体的な使われかたとしては、辞書的用法、規範的用法、分析的用法の大きく三つに分けることができるとしたうえで、規範的用法については、共通点とでもいうべき5 つのキーワードがあることを指摘し、さらにこの用法においての問題点および今後注意すべき点などを整理している。分析的用法については、さらに包括的アプローチ、サード・セクターからのアプローチ、政府からのアプローチ、の三つにわけることができるとした上で、それぞれにつき簡単な説明を加え、さらにこの用法においての問題点および今後注意すべき点などを整理している。なお、本稿は今後作成する予定の論文の一部分に相当するものとして執筆したものである。