著者
向井嘉之 ムカイ ヨシユキ Yoshiyuki Mukai
雑誌
聖泉論叢
巻号頁・発行日
no.17, pp.137-156, 2010

日本の戦後報道は筆者の調査では平成17(2005)年のいわゆる戦後還暦報道がターニングポイントであった。また,日本の戦後報道の特徴は国内での記憶のみに拘る内向き志向であり,その記憶は被害国・日本に大きく傾斜した報道であった。これに対し,第二次世界大戦に参戦した主要国の戦後60年余りを経た戦後報道は基本的人権,民主主義,諸民族の共存といった価値観を否定するファシズムとの戦いの記憶として,今も明確に記憶する義務を認識している。特にドイツ国民は今も痛みを抱え,過去に向き合っている。平成21(2009)年,核廃絶への志が世界で具現化しつつある今こそ,日本のメディアは原点に戻り,第二次世界大戦の記憶をあらためて若い人たちに伝える新・戦後報道に取り組むべきである。