著者
上田 宜子
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.181-189, 2006

ナラティブは単なる時系列に並べた出来事の集成ではない。自分の物語を紡ぎ語ることに焦点をあて, 体験や体験との関連性を掘りさげ, 自らにもたらされた変化とその影響をみつめることで未来に向かう自分に方向性を与えてくれるものである。人は誰でも, 過去, 現在, 未来を繋ぐ自分の物語を持って居る。本研究では, 過去を隠すことで今の幸せを手に入れようとした人の苦悩を, ナラティブ・アプローチを用いて問題の解決を図り, 個別援助に結びつけた過程について論じた。
著者
水野 邦夫
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.35-52, 2006

Lee(1977)は恋愛の色彩理論を提唱し, 松井ら(1990)はそれに基づいた恋愛傾向測定尺度の日本語版を作成しているが, 本研究では, より簡便で回答しやすい尺度の作成を試み, その妥当性および信頼性を検討するとともに, 他の特性などとの関連性や, 男女や恋人の有無によって, どのような恋愛傾向の違いがみられるかを調べることを目的とした。大学生および専門学校生466名(男子247名, 女子217名, 不明2名)を対象に, この尺度を含む質問紙調査を実施し, 分析を行ったところ, 尺度には充分な妥当性や信頼性は認められなかったが, さまざまな恋愛傾向を測定しうるものであることが確認された。また, ストルゲを除く尺度は協調的なパーソナリティ特性との問に有意な相関関係がみられた。さらに, 恋愛傾向の男女差や恋人の有無による差を調べたところ, 男子はアガペ(献身的な愛)やエロス(耽美的な愛)が高いのに対し, 女子はプラグマ(実利的な愛)が高く, また, 恋人がいる群はストルゲ(友愛的な愛)が低く, 恋人がいない群ではマニアとエロスが低く, 片想い群ではアガペが高いなどの結果が得られた。
著者
長谷部 ゆかり 齋藤 文子
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
no.17, pp.167-179, 2009

老年期を目前にした更年期にある女性は,閉経,子どもの独立など様々なライフイベントの変化からもストレスが蓄積し更年期うつ病や更年期障害などを引き起こす危険性がある1)。このため,医療職者は更年期女性の健康管理に着目し,心身の健康を保持するようなサポートが必要だと考える。高齢者には,老徴の現れとともに身だしなみやおしゃれに対して消極的になる傾向があり,心身ともに老化を促進させる要因となる2)との報告があり,化粧療法などの生活意欲向上方法が提案されている。一方,加齢とともに機会が減少するような結婚式などの非日常的なイベント時の装飾が生活意欲向上にどのように影響するのか報告された例はない。今回,更年期女性に対しウエディングドレス着用というイベントを提供した結果,精神的側面への影響を認めた。
著者
水野 邦夫
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.81-92, 2002
著者
李 艶
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-12, 2005

中国における20歳代の社会人205名,40歳代の社会人189名を対象に調査を実施した。調査の項目はMOW国際研究チームによって作成された尺度を参考にして,質問紙を開発した。その結果,20歳代の社会人は「仕事上の倫理」の強度は40歳代の人より弱いことがわかった。「達成動機」の尺度では年齢差に有意義性が見られなかった。「なぜ仕事をするか」の尺度では,20歳代の社会人は「利益」「経済」「勉強のチャンス」「興味」「地位」を重視したが,40歳代の人は「家族生計の維持」「安全保障」「社会への貢献」をより重視することを明らかにした。これらは各年代の社会,経済,家庭などの事情によるものと考えられる。「人生はどうあるべきか」の尺度について,この二つの年代の人たちは「仕事をする」「レジャーを楽しむ」「家庭のために責任を果たす」点では,得点が高かった。「老後の準備」について,40歳代の人は20歳代の人より得点が有意に高かった,これは40歳代の人の特徴を表す。
著者
山口 隆介 Aquinas Thomas
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
no.18, pp.117-129, 2010

『神学綱要』Compendium Theologiae の第1部「信仰について」より,神性の業について論じた箇所から数章抄訳し,それに註解をつける形で,トマスの創造論から人間の自然本性と悪への議論へのダイナミズムを示す。
著者
山口 隆介
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
no.18, pp.103-116, 2010

トマスの著作の中でもあまり研究されてこなかったと言われる著作『神学綱要』についてその全体をさらに要約し,紹介する。特に第1部の第1篇にあたる「信仰について」を,純粋現実態および現実態という概念を中心に体系をたどりながら要約する。神の一なる神性については純粋現実態という概念が鍵となるが,三位のペルソナについての議論ではそれほど現実態という概念は現れてこない。創造に関しては純粋現実態である神を頂点とし,現実態の多寡による存在者の序列があることが語られるが,その後の議論では,人間が,その知性が神を認識するという現実態において完成するという文脈が優勢になっていくことを示す。
著者
押岡 大覚 鎌倉 利光
出版者
聖泉大学紀要員会
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
no.25, pp.19-30, 2018

本研究では,コ・ファシリテーター方式,一泊二日の宿泊形式により実施されたフォーカシング指向グループ("Focusing-oriented" Group:以下,F.O.G.)ワークショップ参加者から得られた《満足した点》及び《不満足な点・心残り・気がかり》に係る自由記述について,テキストマイニング及び多変量解析による分析を施し,F.O.G.のグループ・プロセスに関する仮説の生成を目的とした。その結果,《満足した点》では「自分のフェルトセンスの感受」,「メンバーの発言への傾聴体験」,「メンバーが言語化したフェルトセンス」,「グループでの気づき」,「聴くことの大切さへの気づき」,「集団雰囲気の感受」,「フェルトセンスの尊重」という構成概念が抽出され,それらをもとに仮説が生成された。一方《不満足な点・心残り・気がかり》では,「発言することへの憂慮」,「自分が言語化したフェルトセンス」,「メンバーとの心理的距離感」,「自分のフェルトセンスが感じられない」という構成概念が抽出され,それらをもとに仮説が生成された。ただし,これらの仮説は第3回から第5回F.O.G.モデル構成から得られたものであり,これまで,あるいはこれ以降実施されるF.O.G.モデル構成全般に汎化して考えられるか否かについては,一定の保留が必要である。
著者
稲山 訓央
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.185-203, 2003

含意が広く散漫となりがちな、演劇という事象について、文化的に類似性の高い映画と比較することで、演劇のみが為しえ、伝えうるものは何かということを論ずる。映画は瞬間の積み重ねを撮影していくことで成り立つものである。したがって、実際に起こった出来事を記録した映画というものも存在するし、また演じ手も、演技をコマ切れに行っていくことが可能である。対して演劇は、劇場の中で、観客と舞台という虚構の場をあえて設定し、演技を一連のものとして、寸断することなく行わなくてはならない。つまり、映画よりも、演劇のほうが虚構性が高いと言える。さらに、映像・音響技術が発達した今日、演劇でしか表現できないことに、「匂い」があると考える。劇場の広さに条件はあるものの、「匂い」を使うことで、演劇の独自性や面白さを追求することができるのではないだろうか。
著者
赤井 伸之
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.17-55, 2007

ヨハネ福音書に記された「姦淫の女」の記事を手掛かりに,刑罰としての石打刑を考察する。この石打刑は古代イスラエルにおける死刑の一形態で,最も一般的なものとされていた。どのような犯罪類型に対して石打刑が科せられたか,また具体的にどのような方式で処刑が実施されたのかを,聖書とその周辺の記事に基づいて検討を加える。
著者
山口 隆介 ヤマグチ リュウスケ Ryusuke Yamaguchi
雑誌
聖泉論叢
巻号頁・発行日
no.18, pp.117-129, 2011

『神学綱要』Compendium Theologiae の第1部「信仰について」より,神性の業について論じた箇所から数章抄訳し,それに註解をつける形で,トマスの創造論から人間の自然本性と悪への議論へのダイナミズムを示す。
著者
新美 秀和 鎌田 千花 土井 美里 中西 一輝 西堀 咲輝 西山 淳 久武 貴昌 松浦 健吾 山川 綾音
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
no.21, pp.49-63, 2013

本稿では,大学のゼミ活動の一環として実践した「河童を用いた想像遊び」について報告した.活動の具体的内容は,ある学童保育で実践している活動(NPO 法人芹川子育て支援部門,2013)を参考にして原案を作成し,活動の場となった幼稚園の園長先生及びクラス担任との協議を経て決定した.協議の結果,5回の活動時間が与えられることとなった.1回あたりの活動時間は30分〜1時間,頻度は週に1回であった.第1回は彦根にいるとされる妖怪を紹介し,第2回と第3回では河童の絵本を読み,第4回目には河童への絵手紙を園児たちに作成させ,第5回目には河童からの返事を手渡した.5回の活動が終了した後,保護者に対し自由記述のアンケートにとったところ,園児たちはすっかり河童の存在を信じ込んだこと,また休日などに親子で河童を探しに近所を散策したことなどが報告された.最後に,今回の活動が園児に及ぼした影響,保護者に及ぼした影響および,本稿執筆者たちに及ぼした影響について論じた.
著者
押岡 大覚 鎌倉 利光 寺原 美歩
出版者
聖泉大学紀要委員会
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
no.23, pp.1-12, 2016

本研究は,第1回フォーカシング指向グループ("Focusing-oriented" Group:以下,F.O.G.)参加者から得られた《満足した点》及び《不満足な点・心残り・気がかり》に係る自由記述について,テキストマイニング及び多変量解析を用いた体系的,計量的分析を行い,F.O.G.のグループ・プロセスに関する仮説の生成を目的とした.その結果,F.O.G.参加者は,集団内で「他者との関わりの感覚」を覚え,安心できる存在として他者を感じ,その安心感を基盤として,多方向的な相互作用を経験する.そして,個人が「他者との関わりの感覚」を覚えるようになると,「自己の身体感覚」が賦活され,「自己の発信」が行えるようになるという,満足感に係るグループ・プロセスの仮説が生成された.一方,F.O.G.参加者は「他者の身体内感覚を感じられない」,あるいは「自己の身体感覚を感じられない」状態になると,「自己の発信ができない」状態になるという,不満足感等に係るグループ・プロセスの仮説が生成された.ただし,これらの仮説は,第1回F.O.G.のみから得られた限定的なものであり,今後のF.O.G.モデル構成全てに適用して考えられるか否かについては,一定の保留が必要である.
著者
野本 茂
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.101-118, 2000

IT革命は、新機軸の情報通信ネットワーク (インターネット : コンピュータ・ネットワークのネットワークをインフラとする。) のオープン性・汎用性・情報共有性・ユーザ主導性がもたらす、経済社会を根本から変革する事象である。流通経済情報論としても、流通がIT革命下、どのように変わってきているのかをみなければならない。結論は、IT革命によって、流通セクターにおいては、「第二次流通革命」というべき変革が進行していること、生産者による「eマーケティング」の流通が登場していること、および「eマーチャント」による新たな流通経路あるいは流通機構の変革が進行していることが確認できるという点である。なお、本題の考察は「生産者セクター」「流通業者セクター」「消費者セクター」の分析フレームで行ったが、他の分析フレームで行い、分析を深めること、および各事象の内実をさらに考察し、豊富なものにすることが今後の課題となる。
著者
竹村 朋子
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
no.19, pp.77-90, 2011

今日、米国におけるジャーナリズムは経営および報道の質において衰退を続けている。その最も大きな要因は、メディアの過度な商業化にある。1970年代後半からメディアの商業化が加速したことで、米ジャーナリズムはより安価なニュースを制作し、より多くの利益を得るというビジネス・モデルへ傾いていった。ニュース・ルームへの投資が削減される中で、調査報道は最も予算や規模が縮小している部門のひとつである。近年、非営利のオンライン調査報道機関が設立され始めている。非営利機関と既存の商業メディアが連携することで、非営利機関が行った調査報道を商業メディアが記事として伝えるという新たな情報発信の流れが生まれた。本稿では、2007年に設立され、2010年、2011年と2年連続でピューリッツァー賞を受賞したProPublicaを取り上げ、米国の新たなジャーナリズムの流れを検討する。ProPublica の運営において最も大きな課題は、非営利の形態を続けるために安定的な資金源を獲得することである。資金の安定化こそ、非営利メディア組織が質の高いジャーナリズムを維持・提供することの源になると考える。
著者
李 艶
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
no.16, pp.55-73, 2008

本論文は,心理学の立場から漢字と漢字の認知について検討する。漢字はそれ自体論理性があり,漢字を学習することは人間の論理性を育てるのに役に立つ。漢字は形,音声,意味という3つのコーデイングがあり,視覚的に優れている。また,漢字は弁別や認知もしやすい文字である。従って,漢字は学習しやすい文字であるといえる。以上の視点を踏まえて,漢字の優位性,漢字の認知,漢字と脳,漢字の学習,漢字と書道,漢字ゲーム,現代漢字心理などについて論じる。
著者
西村 敏雄
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
no.11, pp.61-78, 2003

凶悪な少年犯罪が起こるたびに、新聞などのメディアによる犯罪報道が、加害者や被害者の氏名や家族関係などのプライバシーの人権を侵害するケースがあとをたたない。本稿では少年法の適用や犯罪報道などの事例を基に報道(表現)の自由や人権問題をとりあげる。そしてまだ完全とはいえない少年法の改正については、単なる合理性や論理性だけを重視した法律論議だけではなく、人の感情や価値観なども抱合するような議論を、また報道の自由に関してはある一定の「制約」が必要であることを指摘した。
著者
赤井伸之
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
no.17, pp.21-39, 2009

聖書に記された姦通の語を手掛りに,姦通関連の記事を探り,姦通疑惑の女に対してなされたユニークな神判をめぐって,ささやかな考察を進めた。
著者
水野 邦夫
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.53-59, 2006

本研究は, Midzuno(2004)のモデルに従い, 良好な対人関係を形成・維持する際に, どのような社会的スキルが関連するかを検討することを目的とした。大学生および専門学校生188名(男子99名, 女子89名)に質問紙調査を実施し, 思い浮かべた1名の人物について, そのパーソナリティ特性(外向性, 協調性), さまざまな社会的スキル(関係開始, 自己主張, 関係維持)およびその人物との関係性(関係の良好度)を回答させた。モデルに従ってパス解析を行ったところ, 関係維持スキルは良好な関係性と正の関連を持つのに対して, 自己主張や関係開始スキルは関連しないかむしろ負の関連を持つことが示された。パスを整理し, 再度分析を行ったところ, 社会的スキルは外向性を背景とした関係開始・自己主張スキルと, 協調性を背景とした関係維持スキルに分かれ, しかも, 関係開始・自己主張スキル(および外向性)は良好な対人関係に直接関連しないことが示された。これらの結果をもとに, 関係の開始から維持にかけて, 表現性スキルと感受性・制御スキルとの間に機能的な役割の交代が生じている可能性が示唆された。
著者
山西 洋平 新美 秀和
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉論叢 (ISSN:13434365)
巻号頁・発行日
no.19, pp.91-103, 2011

本研究は,青年期の「こころの居場所」をテーマとして取り上げ,青年期にある大学生42名に対して「こころの居場所」に関する自由記述形式の質問紙と室内画を用いて調査を行った。その結果,「こころの居場所」として大きく「一人の世界」「他とのかかわり」「場所や状況」というありかたがみられ,さらに下位に11分類し,それらの特徴を見出した。室内画では,描画の大きさ,部屋が描かれる際の視点,壁の有無において特徴がみられた。「こころの居場所」のありかたと室内画の特徴の関係を調べるためにχ2検定を行った結果,下位分類である「一人の場所」「動物とのふれあい」「社会的集団」を「こころの居場所」とする人においては室内画の視点に関して特徴が示され,「二者的なかかわり」を「こころの居場所」とする人においては壁の有無に関して特徴が示された。以上を青年期の特徴や対象化の観点から検討し,事例を2つ挙げて考察を行った。