著者
砂原 由美 Yumi Sunahara
出版者
関西外国語大学・関西外国語大学短期大学部
雑誌
研究論集 = Journal of Inquiry and Research (ISSN:03881067)
巻号頁・発行日
vol.101, pp.53-67, 2015-03

メキシコ人作家フアン・ルルフォ Juan Rulfo によって書かれた『ペドロ・パラモ』PedroPáramo(1955)は多様な解釈を可能にする文学テクストであり、現在までに多くの研究がおこなわれてきた。本稿ではノースロップ・フライが『批評の解剖』で提示した、主人公の行動能力やプロットに基づいた分類方法に依拠しながら、『ペドロ・パラモ』がどのような物語であるということができるのか、ジャンル論的考察を行った。『ペドロ・パラモ』を「ペドロ・パラモの物語」、「フアン・プレシアドの物語」、「スサナ・サン・フアンの物語」の三つの主要エピソードに絞り考察した結果、行動能力の高いペドロ・パラモは物語の中心から「疎外」され、行動能力の低いフアン・プレシアドやスサナ・サン・フアンは物語の中心に「受容」される、という結論に至り、権力の疎外とコマラの再生の物語を『ペドロ・パラモ』に見出すことができることを示した。