- 著者
-
山本 友紀
Yuuki YAMAMOTO
- 出版者
- 神戸芸術工科大学
- 雑誌
- 芸術工学2014
- 巻号頁・発行日
- 2014-11-25
両大戦間期の西洋のモダン・アートにおいては、新しい映像機器の発達によって示された自然の世界に、新たな造形的モデルを見出す傾向がみられた。本論文では、フランスにおける1930年代の芸術界における前衛芸術を主な対象として、こうした傾向がどのような作品を生み出したかについて考察した。1920年代以前に機械の美学を提唱していたフェルナン・レジェ、ル・コルビュジェとアメデ・オザンファンは、1930年代に、「自然」をテーマとする有機的で不定形な形態をそれぞれ絵画に導入している。それは社会・文化的危機を迎えた1930年代という時代状況で、未来の社会に向けての統一的ヴィジョンを示すための一つの解決法をもたらす方法として選び取られたのであり、とくに彼らの「オブジェ」のとらえ方は、シュルレアリスムの「ビオモルフィスム」とは根本的に異なるものである。さらに1930年代のフランスで非具象表現を目指して組織された「アブストラクシオン・クレアシオン」の活動にも、有機的な形態を造形へと取り込んだ画家たちがいる。彼らは、カメラのような機械を自然や生へと到達するための装置とみなし、非具象的なイメージを、物理的な世界へと結びつけようとした。これらの試みには科学と芸術を同一の地平で扱おうとした、先駆的な試みをみることができる。