- 著者
-
飯野,祥一朗
- 出版者
- 日本矯正歯科学会
- 雑誌
- Orthodontic waves : journal of the Japanese Orthodontic Society : 日本矯正歯科学会雑誌
- 巻号頁・発行日
- vol.61, no.4, 2002
骨格性下顎前突者において, 下顎骨後退術あるいは上下顎移動術に伴う頭部, 鼻尖および鼻下点に対する頬部豊隆の変化について検討した.対象は, 下顎骨後退術を施行した10例(MS群), 上下顎移動術を施行した7例(TJ群)である.ただし, MS群のオトガイの後方移動量, あるいはTJ群の上顎骨前縁部の前方移動量とオトガイの後方移動量の合計が8∿12mmの者を選んだ.術直前と術後約1年の側貌頭部X線規格写真を用いて, 両術式に伴う頭部, 鼻尖および鼻下点に対する頬部豊隆の変化および両群の軟組織側貌の違いについて調査し, 以下の結論を得た.1. MS群では, 頭蓋, 眉弓, 鼻尖および鼻下点に対して頬部豊隆点が上方へ, 頬部豊隆下点が後方へ移動した.2. TJ群では, 頭蓋および眉弓に対して頬部豊隆点が前下方へ, 頬部豊隆下点が前方へ移動し, 鼻尖および鼻下点に対して頬部豊隆点が下方へ移動した.3. TJ群の鼻下点に対する頬部豊隆点, 頬部豊隆下点の位置は, MS群に比べて有意に前方にあった.以上から, 鼻下点に対する頬部豊隆点および頬部豊隆下点の前方位は中顔面部の陷凹感を強調し, この改善には下顎骨後退術単独の方が有効であり, 頬部豊隆を含めた軟組織側貌の変化を予測して術式を選択すべきであると考えられた.