著者
市來,健吾
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, 1994-09-20

本研究では、「粘性流体中におけるの分散多体系の動的挙動」として、粉体流動層の数値シミュレーションと、粘性流体中の多粒子系の平均沈降速度の理論に関して行なった。これらは、「粉体」の現象に対する実験的側面と、解析的側面として捉えることが出来る。両者の間に存在する溝を埋めることは、非常に重要であり、粉体の引き起こす現象の、物理的理解には欠くことの出来ない課題である。残念ながら、本研究において、この目的は達せられなかった。しかし、現在もこの文脈で研究を継続中である。はじめに、本論文の概要をまとめておく。まず、粉体流動層の数値シミュレーションについて述べる。これまで、粘性流体中の多粒子のダイナミクスに関する研究は、流体力学的な相互作用の取り扱いが複雑であったため、コロイド粒子系に対して幾つか行なわれていた程度である[1]。今回、コロイドより粒子のスケールが大きな系に対して、同様の手法を用いてシミュレーションを行なうことが出来た。この場合は、熱的なランダム力よりも、粒子の慣性の効果の方が重要であり、この効果を導入して計算を行なった。シミュレーションの結果から、粒子の速度分布が、Maxwell分布ではなく、指数分布的であることが得られた。同様の分布は、乱流の中でも「ハード乱流」と呼ばれる現象に対しても得られているものである。以上のことから、粉体粒子の速度場と、乱流との関連についての研究が待たれる。次に、本研究のもう一つの課題である、粘性流体中の多粒子系の平均沈降速度の理論に関して述べる。シミュレーションの定式化でも問題になる流体力学的な相互作用の長距離性による発散の問題や、流体力学的な多体相互作用の複雑さから、これまでの沈降速度の理論は、Batchelor(1972)[2]での希薄極限での扱いに限られていた。高濃度への拡張の試みの一つとしてBrady&Durlofsky[3]による方法を紹介し、彼らの方法の問題点を明らかにする。次に本研究で行なったStokesian Dynamicsの方法の沈降速度の問題への適用について紹介する[4]。その結果、Brady&Durlofskyの結果を改善し、希薄極限でBatchelorとほぼ等しい結果が得られた。

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20年前の文書 https://t.co/E2JQZUe7ql 26(27?)年前の文書 https://t.co/6haBv3T2SB すげぇな、修士の学生のいちきくん、頑張って書いてる。

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