- 著者
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長生舎主人 [著]
- 巻号頁・発行日
- 1836
マツバランはもっとも原始的なシダ類で、生きた化石。茎が繰り返し二股に分かれながら伸びてホウキ状を示す。胞子は上部に着き、熟すれば黄色になる。文政~天保期(1818-43)に流行し、全体の容姿や胞子の着き方の変異を競った。熱帯・亜熱帯に広く分布するが、この奇妙な植物を園芸品としたのは日本だけである。本書は122品の花銘を記し、うち60品を色刷として示す。著者長生舎主人は幕臣(奥御右筆)で故実家の栗原信充(のぶみつ、1794~1870)である。信充は万年青(オモト)なども好み、「金生樹譜シリーズ」7点を刊行する予定だったが、第1冊の『金生樹譜別録』(特1-1549、文政13年=文化元年、1804刊)、第2冊の『万年青譜』(特1-1769、天保4序刊)、第3冊の本書と、3点だけに終わった。玉清堂編『松蘭譜』(しょうらんふ、特1-934、天保8年[1837]刊 )は最高のマツバラン図譜だが、当館資料は上巻を欠く。(磯野直秀)