- 著者
-
熊谷 隆之
- 出版者
- 立命館大学人文学会
- 雑誌
- 立命館文學 (ISSN:02877015)
- 巻号頁・発行日
- vol.624, pp.675-684, 2012-01
鎌倉幕府文書は、関東・六波羅・博多発給文書に大別でき、それぞれは下文様文書と書札様文書からなる。関東発給文書の場合、下文様文書は概して下文と下知状に分かたれ、その主たる用途は補任宛行・安堵・裁許である。時期を下るにつれて、下文の用途は補任宛行・安堵に限定される一方、下知状は補任宛行・安堵とともに、裁許にも用いられることになる。これまで関東発給の下知状は、関東下知状として一括して把握されてきた。ところが、鎌倉期をつうじて分析してみると、下知状は、当初、五つの様式からなり、時期を下るにつれ、二つの様式に確立したことが判明する。そのうえで、下知状の主たる用途である補任宛行・安堵・裁許に着目し、それらを俯瞰しなおすことで、従来とはややおもむきを異にする下文様文書の総体的な輪郭が浮き彫りになるとともに、鎌倉幕府の安堵と裁許をめぐる新たな論点が浮上することになるだろう。