著者
熊谷 隆之
出版者
越中史壇会
雑誌
富山史壇 (ISSN:02880458)
巻号頁・発行日
vol.181, pp.1-9, 2016

斯波宗家は、足利泰氏の庶長子たる足利(斯波)家氏の嫡男で、斯波氏の第二代である。父家氏は『吾妻鏡』に将軍の近習として散見するものの、同書の記事は、文永三年(―二六六)までしか残らず、鎌倉後期の斯波氏については、茫漠たる状況にある。そんななか、本稿で着目するのは、越中国岡成名(高岡市街地の北西、小矢部川の右岸、旧西条村の一帯)である。鎌倉末期の岡成名に関する関東裁許状二通には、斯波宗家とその嫡子斯波宗氏が登場する。これらの史料じたいは、すでに利用され、よく知られるものである。だが、おって述べるごとく、宗家をめぐる先学の理解には、いくつかの誤認がみられ、まずは、それらの混乱を整序する必要がある。本稿は、岡成名をめぐる考察を糸口に、鎌倉後期幕府政治史の一側面の提示を試みるものである。

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