著者
岡村 心平
出版者
関西大学大学院心理学研究科心理臨床学専攻
雑誌
Psychologist : 関西大学臨床心理専門職大学院紀要
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-10, 2013-03-12

本論は、筆者が考案したなぞかけを用いたフォーカシング「なぞかけフォーカシング」を紹介する。導入では、 (1) 日本独自の言葉遊びである「なぞかけ」について、特にカケ・トキ・ココロという3つの構造をもった三段なぞと呼ばれるものについて説明し、 (2) 状況についてのメタファーとして機能するハンドル表現の特徴と、 (3) その意味を問いかけるアスキングの機能について示した上で、 (4) なぞかけとフォーカシングの構造の間の共通性について理論的に検討した。次に、そのような理論的知見を参照しながら作成した「なぞかけフォーカシング簡便法」について紹介し、その実践例を提示した。考察では、 (1) なぞかけフォーカシングの手順が、フォーカシングのプロセスを特徴づける「交差」と「浸り」を生じさせるために、どのように機能しているのかについて論じ、 (2) “その心は”というなぞかけのアスキングと通常のアスキングの中の“What's the crux of it?”という応答との比較と、その訳語としての妥当さについて検討し、 (3) フォーカシングにおける「問いかける」というプロセスと、なぞかけフォーカシングのもつ特徴の共通性についてのさらなる論考を行った。最後に、なぞかけフォーカシングを心理療法的応答の「稽古」として利用することの意義について、今後の展望を示した。

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