著者
阿津川 令子
出版者
関西大学臨床心理専門職大学院 心理臨床センター
雑誌
関西大学心理臨床センター紀要
巻号頁・発行日
vol.12, pp.59-68, 2021-03-15

Tedeschi, R.G.とCalhoun, L.G.によって発表された心的外傷後成長(posttraumatic growth = PTG)は、「トラウマティックな出来事、すなわち心的外傷をもたらすような非常につらく苦しい出来事をきっかけとした人間としての心の成長」と定義づけられている(Tedeschi & Calhoun, 1996)。PTG は彼らによって、その理論モデルの構築や尺度構成も成されており、昨今はトラウマ研究の分野やポジティブ心理学の文脈のなかで散見されるようになってきた。今日までさまざまな対象者に関する研究が蓄積されてきているが、アルコール依存症からの回復者のPTG研究はほとんど見当たらない。本研究では、公刊されている図書を利用し、A.A.メンバーであるアルコール依存症者7名分の回復手記のなかに表現されている「変化・成長」をPTG の視点から分析・検討した。アルコール依存症からの回復者の手記には、PTGに該当する表現が多数見られた。森田・一丸・大澤ら(2017)を参考に、KJ法的手法でカテゴリー化を行った結果、『自身とのつながり』『ソブラエティ(素面)を生きる』など6個の大カテゴリーを得ることができた。結果をもとに、アルコール依存症者の回復手記に表現されたPTGの特徴について考察するとともに、PPTG(Post-Posttraumatic Growth)についても考察を加えた。

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