著者
比佐 篤
出版者
関西大学教育開発支援センター
雑誌
関西大学高等教育研究 (ISSN:21856389)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.67-78, 2016-03-31

大学生は、自分で文献を講読して学術的な見解を立てる必要がある。ゼミ以外の多人数授業でも学生に見解を構築する機会をより多く与え、そのための方法論を学ばせるための授業法として、講読を活用した授業法がある。通常の授業のように何らかのトピックについてまとめたレジュメなどの基礎資料を用意しつつ、それを他の文献と絡めてさらに掘り下げた説明がどう行えるのかを学生に考えさせる課題を課す。その課題には、まずは教員が文献を指定する予習講読を課し、そのうえで学生に基本資料と関連する文献を自分で探させる事前課題を課す。こうして、文献に基づいた見解の提示を何度も体験させる。授業では、学生の解答に拠りつつさらに教員が修正した説明を行うことで、学生は自分の主張の妥当性や問題点を確認しつつ、教員の説明を通じてそれをいかに洗練させるのかについても学べる。こうした授業は、文献に基づきつつ見解を組み立てるという学術的な研究法と合致しており、授業を通じて学生は学術的な方法論を身に付けうる。さらに教員の側にも、学生への出題や学生からの解答を元に、他分野の文献を用いた説明を行う意識を強く持つことで、自分の専門からより広く他の研究分野へ視野を広げうるという利点もこの授業法にはある。

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