著者
大門 信也
出版者
法政大学サステイナビリティ研究センター
雑誌
サステイナビリティ研究 = Research on Sustainability : The Academic Journal of the Research Center for Sustainability (ISSN:2185260X)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.47-63, 2019-03-15

サステイナビリティ概念は、現在と未来との世代間公正を実現する観点から、今日グローバルな政治を動かすまでの支配力をもった言葉となっている。他方でこの言葉は、現在世代への支配を正当化する概念にもなるため、草の根からの批判を呼び起こす可能性も有している。そこで本稿では、草の根から進められるサステイナビリティの可能性を見出すために、滋賀県の「粉せっけん」推進運動の経緯を辿った。同運動は、資本と対峙する労働組合の経験に原点があり、革新自治体をつくる政治的取り組みとも関連が深い。単に環境負荷の少ない消費財を提案するものではなく、より根本的な物質循環に根ざす取り組みであった。こうしたダイナミックな運動は、責任を引き受け、受動的不正義を克服し、そして異を唱える他者の声を受け入れる姿勢に支えられてきた。サステイナビリティ概念が、ただ未来世代を掛け金として現在世代を支配するだけの空虚な概念とならないためには、「受動的不正義」や「複眼」など、草の根から立ち上がってきたこれらの契機に着目する必要がある。

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カライモブックス開店しました。晴れ。 今日からは『草の根サステイナビリティの論理とその条件 : 滋賀県粉せっけん運動に着目して』大門信也、を読もう。水俣とのかかわりもしっかりと書かれてそうで楽しみ。恥宣言のとことか。 ここでダウンロードできる→https://t.co/ZXfsa7XYo7

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