- 著者
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福田 由紀
内山 和希
- 出版者
- 法政大学文学部
- 雑誌
- 法政大学文学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Letters, Hosei University (ISSN:04412486)
- 巻号頁・発行日
- vol.70, pp.89-100, 2015-03-15
本研究では,印刷物とタブレット,パソコンディスプレイといった表示媒体の特性が校正読みにおける誤字脱字検出や内容理解にどのような影響があるのかを検討した。大学生に文章を提示し,文章中の誤字脱字検出課題と内容理解課題を課した。また,表示媒体に関する主観的な印象評価や慣れに関して尋ねた。その結果,実験参加者の各媒体への慣れの程度は同様であった。誤字脱字検出数は,印刷物条件≒タブレット条件>パソコン条件の順で有意に高かった。一方,内容理解に関しては有意な差は認められなかった。さらに印象評価を因子分析した結果,「読書しやすさ因子」,「見やすさ因子」「疲れにくさ因子」が抽出された。「読書しやすさ因子」のみ,印刷物条件≒タブレット条件>パソコン条件の順で有意に評価が高かった。誤字脱字検出数に影響を与える要因を特定するために重回帰分析を行った結果,「操作性の高さ」と「疲れにくさ因子」がポジティブに影響していた。これらの結果より,各媒体への慣れの程度が同じ場合には,操作性の優れた印刷物やタブレットがパソコンディスプレイよりも校正読みの成績にポジティブな影響を与えることがわかった。