- 著者
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今井 民子
- 出版者
- 弘前大学教育学部
- 雑誌
- 弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
- 巻号頁・発行日
- no.80, pp.29-36, 1998-10-30
本稿では,第2次ブフォン論争といわれるグルック-ピッチンニ論争の本質を明らかにするため,ピッチン二派のマルモンテル,グルック派のアルプ,中立派のシャバノンの論考,及びこの論争とは無縁であったモーツァルトのオペラ論を検証する。古典主義の立場からグルックの表現を激しすぎると退けるマルモンテルは,同時にイタリア音楽の声楽美の濫用にも批判の目を向け,一方アルプは,グルックのオペラ改革の成果を評価しつつ,深い感動を誘うピッチンニオペラの魅力も認める。また,旋律と和声をともに認めるシャバノンの見解は,ルソーとラモー以来の旋律・和声論争に終止符を打つものとして注目される。イタリア派の一人として,音楽の詩に対する優位を主張するモーツァルトは,グルックとは対極のオペラ作曲家といえる。これらの見解は,18世紀音楽の中心主題であったイタリア音楽対フランス音楽,旋律対和声の問題の終悪を意味するものといえよう。