著者
松本 敏治 崎原 秀樹 菊地 一文
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.113, pp.93-104, 2015-03-27

松本(2011, 2014)は、特別支援教育関係の教員に対してASD・ID およびTD の方言使用についての調査を行い、ASD において顕著に方言使用が少ないとする結果を得ている。松本・崎原・菊地(2013)は、方言の社会的機能説にもとづく解釈仮説を提出し、ASD の方言不使用の原因を対人的・社会的障害に求めている。しかしながら、幼児ASD においても方言不使用がみられるとの報告があり、上記の仮説では、この現象を十分に説明出来なかった。そこで、ASD 幼児の方言不使用について、理論検討を行った。本論では、ASD とTD の"模倣"にみられる違いを端緒として、共同注意・意図読み等他者の心的状態についての理解が自然言語習得に及ぼす影響を議論するとともに、それらに困難を抱えるASD の言語習得のあり方を想定することで、ASD 幼児の方言不使用という現象を解釈しようと試みた。また、方言の社会的機能説による解釈についても心的状態の理解の側面から再検討した。
著者
鈴木 愛理 仁平 政人 平井 吾門 山田 史生
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
vol.117, pp.9-20, 2017-03-28

国語科で扱える「感性や情緒」、「ものの見方、感じ方、考え方」、「想像」、「心情」、「言語文化」には限度があり、広がりや深みが制限されてしまう。そこで、教科書に掲載することは不可能ではあるが人間の感情の本質に迫ることのできるテーマを扱った作品を示すことによって、教材発掘の一助としたい。今回は、「男色」を描いた作品として、現代文からは、山崎俊夫「夕化粧」、古文からは井原西鶴『男色大鑑』より「垣の中は松楓柳は腰付」、漢文からは『韓非子』からの一篇を提出する。
著者
工藤 真生 佐藤 光輝
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.102, pp.49-55, 2009-10

日本桜100選に選定されている弘前公園において、毎年4月下旬から5月上旬まで開催される弘前さくらまつりでの花見を見ると、桜の木の下一点で行われる宴会スタイルが主であり、広い園内にある約50種2600本の桜を楽しむものとはなっていない。本研究では、この要因を従来の日本酒のボトルデザインにあると考え、若い女性の趣向を取り入れたラベルデザインと飲酒スタイルをファッション化するボトルデザイン制作を試みた。ボトルデザインでは、口につけたまま傾けるラッパ飲みをしないようにボトルを立ててストローでの飲酒スタイルを用い、ラベルデザインでは桜の風景がボトルの中に映り込むことによって、歩きながらの飲酒を楽しめるものにした。その結果、若い女性に好まれるように日本酒のボトルをファッション化することにより、従来のグループ宴会スタイルから個人やカップルが歩きながら花見を楽しめる、新しい飲酒スタイルの提案に成功した。
著者
郡 千寿子
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
vol.117, pp.1-7, 2017-03-28

現代語の形容詞「おいしい」は、「味が良い」ことを表現した古語「うまし(うまい)」を女性たちが「おいしい(いしい)」と言い換えて使用し始めたことに由来1)するものである。江戸時代の往来物資料には、同義語でありつつ使用者の性別を分化する「うまい」と「おいしい」の両語形が確認できるが、意味としては「おいしい」は、「味が良い」ことに限定されていた。「おいしい」の使用者は、当初は女性だけであったが、その後、男性にも波及し、現在では「味が良い」意として一般的に使用されている。ビールの広告用語では、「おいしい」より「うまい」が多用されており、「うまい」は、「おいしい」の誕生によって敬意が低減した一方で、味覚表現の「おいしい」に比して、より強調的で断定的な意味を有する語として機能していると考えられた。他方、近年、「おいしい生活」「ヱビスは時間をおいしくします」といった「味が良い」意味でない、新しい用法が生まれ、定着しつつある。その背景には、「おいしい」が、古い語形「うまい」がもつ多様な意味に影響されて、意味を拡大派生させた一面があると考えられるであろう。
著者
東島 利佳 清塚 更 森 菜穂子
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.98, pp.91-96, 2007-10

青森県と群馬県における高等学校のマラソン大会実施状況や熱中症発生の予防対策の状況について調査・検討した。その結果,マラソン大会は青森県より群馬県の方が多く実施されていた。青森県では最も気温が高いとされる午後2~3時に実施している学校もあったが,群馬県では全ての学校で午後2~3時以外の時間帯に実施していた。大会実施月は青森県で5月が多く群馬県で11月が多かった。給水・給食は青森県の方が多かった。競技中の途中棄権者は青森県の方が多かった。競技中は,青森県に比べ,群馬県の方が専門機関とより多く連携がとられており,特に警察との連携が多かった。
著者
郡 千寿子
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.106, pp.1-7, 2011-10

弘前市立図書館に所蔵されている、寛政五年( 9 )刊の『都花月名所』の資料性について検証したものである。京都府立総合資料館にも同様の文献が所蔵されているが、従来、地誌資料として扱われて地理学的分野での研究対象とされてきた。本稿では、それぞれの文献を比較検討した結果、京都府立総合資料館所蔵本が不完全本であること、弘前市立図書館所蔵本が刊行時の様相をとどめた善本資料であることを明らかにした。その上で、国語資料としての『都花月名所』の可能性を探るために漢字表記に付された振り仮名に注目し、四つ仮名や連声、カ行合拗音といった言語事象について考察検討し報告した。
著者
吉中 淳 工藤 七央
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.113, pp.129-138, 2015-03-27

これまでの不登校・登校拒否研究を振り返り、1990年代初期に社会学の影響により大きなパラダイム転換が起こったこととそれが心理学に与えた影響を確認しつつ、現時点で未解決の問題を特定し、心理学は再登校支援のためにどのような貢献が可能かについて考察する。
著者
鈴木 愛理 仁平 政人 平井 吾門 山田 史生
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.114, pp.25-34, 2015-10

平成20年1月の中央教育審議会答申を受けた現行の学習指導要領では、小学校・中学校で養い、豊かにしてきた「思考力や想像力」を、高等学校では「伸ばし」、さらに「心情を豊かに」することが求められている。また関心を深める対象が「国語」(小学校・中学校)から「言語文化」(高等学校)となっており、文化としての言語に対して広くかつ深い関心をもつことが高等学校における目標となっている。しかし「学校教育」「教科書」という制度・制約のもとでは、その不可能性からいくつかの限界が考えられる。国語科で扱える「感性や情緒」、「ものの見方、感じ方、考え方」、「想像」、「心情」、「言語文化」には限度があり、広がりや深みは制限されてしまう。そこで、「教科書」に掲載することは教育的配慮により不可能と思われるが、感情の本質に迫る作品を示すことで教材発掘の一助としたい。今回は、「嫉妬」を描いた作品として、現代文からは江戸川乱歩「白昼夢」、古文からは『今昔物語集』より「美濃国紀遠助値女霊遂死語」、漢文からは『聊齋志異』より「姚安」を提出する。
著者
立田 健太 佐藤 紘昭 大谷 良光
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.102, pp.105-114, 2009-10

青森ねぶた祭への「ハネト若者離れ問題」を焦点とし、若者に当たる高校2年生1140人を対象として祭の観覧・参加状況と祭への意識(思い)を調査した。大型ねぶたの観覧・参加率は2008年59.3%・36.7% で、「ハネト」での参加率は2007年72.8%、2008年64.6% で8.2% 減じており「ハネト若者離れ」の一端が立証された。また、「ねぶた祭は世界に誇れる」や「伝統の継承」には高い意識(約8割)をしめしたが、この数値は参加率とかけ離れており、それを裏付ける「参加しなかった理由」として「特に興味がなく、参加する意義や必要性は感じない」が約4割で、その格差の克服が新たな課題として明確になった。それに対して我々は、学校教育との関わり、社会教育の充実、伝統文化の継承と観光化のバランスの3視点を提起した。
著者
吉中 淳
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.108, pp.153-161, 2012-10

rediger(1982)による、Holland の職業興味の六角形モデルに座標軸を導入するという理論の検証を試みた。大学生248名に職業レディネステスト簡易版として作成されたVRT カード所収の54の職業名を提示し、それぞれ5件法でやりかたの決まった職業かアイデアを出す仕事か(Data-Ideas)についてと、同じく5件法で人を扱う職業かそれとも物・動植物・機械を扱う職業(People-Things)かについて尋ねた。各類型の平均値について散布図をとってみると概ね六角形構造は支持されたが、社会型と企業型の職業についてはData-Ideas 軸について予想と逆の有意差がみられたことにより位置の逆転がみられた。
著者
篠塚 明彦
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.110, pp.9-16, 2013-10

高等学校における「世界史未履修問題」を契機として、世界史教育に対して、歴史学の立場から様々な新しい世界史の理論が提起されている。しかし、これらの提起は学校現場での実践が難しく世界史教育の再生という問題への回答としては十分なものとはなっていない。そこで、地域からの世界史の視点をもとに、新しい世界史理論の提起も踏まえながら、現場での実践を意識した世界史学習のあり方を提起する。具体的には、津軽安藤氏の活躍に着目しながら、南の海域世界と北の海域世界との接点を探る世界史授業を提案し、併せて世界史教育再生の方向性を探っていく。
著者
武内 裕明
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.113, pp.105-114, 2015-03

保育者へのインタビューを通じて,保育者が保育の場でなぜかわいいものを使用するのかを検討した結果,実際の壁面製作等の選択に際してかわいい見本が掲載された保育雑誌や製作参考書を参照することによって,保育者はかわいいものを選択していることが明らかになった。選択に際しては,保育者の好み,子どもの製作,簡単さの3点が基準となっていた。また,保育の場にかわいいものがあるというイメージや,個々の子どもの好みの差を認識しつつも,子どもは平均的にかわいいものが好きだというイメージがかわいいものを使用する背景に存在していた。保育者たちは子どもの個々の好みや教育的観点からかわいいものの使用にためらいを感じることもあるものの,保育の場でかわいいものが用いられているという認識をベースにしているため,その使用自体に疑問をもたない限りは,望ましいものとしてかわいいものを選択していた。
著者
松本 敏治 崎原 秀樹 菊地 一文
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.109, pp.49-55, 2013-03

本論文では、松本・崎原(2011) によって報告された「ASD は方言を話さない」という調査結果について理論的検討を行った。彼らの特別支援教育関係者を対象としたアンケート調査は、ASD は定型発達児およびID に比べ、方言の音声的特徴のみならず、語彙の使用も少ないとする結果を示した。この結果について次の5つの解釈の説明可能性を検討した。1)音韻・プロソディ障害説(表出性障害、受容性障害)、2)終助詞意味理解不全説、3)パラ言語理解不全説、4)メディア媒体学習説、5)方言の社会的機能説。1~4の解釈は、ASD でみられた方言の音声的特徴および方言語彙の不使用を十分に説明することができなかった。一方、方言の社会的機能説は、方言の社会的意味として他者との連携意識・集団への帰属意識などに着目したもので、ASD のもつ対人的・社会的障害の側面から方言の不使用を説明できるものであった。この説は、結果を適切に説明できるもので、かつASD の中核症状との関連が推察された。また、この説と関連して、ことばの社会的機能への気づきとASD への言語的はたらきかけについて考察した。
著者
荒井 一成 古川 香 堤 司 蝦名 敦子
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.108, pp.99-106, 2012-10

木材はイメージを豊かにする個性的な素材であり,図画工作科の材料としてダイナミックに利用することで,表現方法やあそびを広げる材料となりうるが,小学校で木工作を取り上げるには特に安全な環境を整えることが大切である。安全な環境整備には「よく見通せる広い場所」「木工具の整理整頓」「作業台と固定具」「治具の準備」「複数の援助者」が必要である。また安全な表現活動には「基礎技能の習得」が大切であると考えられる。ところが「基礎技能の習得」が前にですぎると知性が優先され,図画工作科の中で大切な色と形で表現意欲を十分に高められないことも考えられる。そこで本論文では,4つの鑑賞を通して意欲を高める「基礎技能の習得」方法を考案し,小学校4年生を対象にした「わたしたちのめざすかたちに~小さな大工さん~」の実践で検討した。その結果,鑑賞を取り入れた本題材が,小学生の表現意欲を高め,充実した内容になることが実証された。また教師が事前に理解し克服すべき小学校図画工作科における木工作の基礎技能の課題が示された。
著者
郡 千寿子
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.110, pp.1-8, 2013-10

山形県立博物館の分館である教育資料館には、近世江戸時代の文献資料が多数保存されている。継続的に行ってきた北東北地域の文献資料の研究調査を背景にして、本稿では『改正絵入南都名所記』について紹介する。現在の奈良、古くは大和や南都とも呼ばれた地域を紹介した地誌資料には、この『改正絵入南都名所記』のほかにも多種多様の資料が存在しているが、それらにも触れつつ、当該資料の価値について検討考察を行った。山形県立博物館教育資料館所蔵の『改正絵入南都名所記』については、『国書総目録』『古典籍文献目録』にも記載がなく、従来まで未見未詳のものであり、紹介することに意義があるだけでなく、東北文化圏における関西文化受容という意味においても、注目すべきものであることを指摘した。加えて、東京都立中央図書館特別文庫所蔵(加賀文庫)の『南都名所記』との比較検討を行い、それぞれの資料の特質について提示した。
著者
伊藤 聖子 岡山 純子 加藤 陽治
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.110, pp.89-92, 2013-10

バクテリアセルロースであるナタデココの微細な網目構造に着目し、その網目構造への分子の浸透性について植物セルロースと比較した。セルロースとナタデココの各試料を、0.1%グルコース溶液およびデキストランT-500(平均分子量50万)溶液100ml に浸し、20分ごとに120分経過するまでの外液の糖量をフェノール硫酸法にて測定し浸透性を調べた。微細な網目構造を有するナタデココへ低分子のグルコースは浸透するが、デキストランT-500(平均分子量50万)のような高分子の物質は浸透しにくいことがわかった。結果を基に、ナタデココの機能性と調理特性などについて考察を加えた。
著者
沼田 天 矢野 慎 長南 幸安
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.104, pp.45-51, 2010-10

近年,環境問題やエネルギー問題などの地球規模の問題が課題となっている。それに伴い環境教育の重要性にも目を向けられてきている。持続可能な発展のため,科学技術の重要性と必要性への認識が高まってきた。新学習指導要領では,環境教育のより一層の充実が求められている。中学校第3学年「自然と人間」の分野は,中学校理科の中で最も環境教育と深く関わっている分野であり,環境教育のより一層の充実のためには,この分野の教材研究が必要不可欠である。本研究では,中学校理科で取り扱われやすい環境問題の中でも地球温暖化のメカニズムと温室効果ガスに焦点をあて,二酸化炭素,メタン,一酸化二窒素,ブタンの温室効果の検証実験を行い,その結果とそれぞれの温暖化係数(二酸化炭素:1,メタン:21,一酸化二窒素:310)との関係の考察を行った。また,それらの実験方法を授業に取り入れ生徒に考察,話し合いさせるような授業計画を開発することにより,環境教育の充実を図る。