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岡部 光明
コーポレート・ガバナンスとは、企業がその「本来的な機能」を十分に果たすために「関係者」相互の関係を規定する「仕組み」が構築され、それが機能している状態を指す。しかし、この場合、企業の本来的な機能、関係者、仕組みをそれぞれどう考えるかによって多様な見方がある。本稿では、コーポレート・ガバナンスのあり方(手法)に関する従来の考え方を示すとともに、それらとは全く異なる一つの新しい視点からのアプローチとその可能性、必要性、そのための課題、を提示することを意図している。その結果、(1)従来の視点とは経済学(ファイナンス論)アプローチ、法学(法令コンプライアンス)アプローチの二つである、(2)これに対して倫理学アプローチという発想もありうる、(3)その場合の中心的な概念はインテグリティ(integrity)でありそれは一貫性、道徳性(誠実)、説明責任によって構成される、(4)企業関係者がその意義と価値を体得するとともに組織としてもそれを重視するようになればコーポレート・ガバナンスの手法として新しい次元(法律ベースのハード統治に加えてソフト統治)を追加する意味を持つ、(5)これは理論的にも妥当性を持つ(シェリングの自己管理モデルで説明可能である)、(6)日本社会では今後インテグリティという概念の理解とその普及が課題であり、それは教育(特に大学教育)の大きな役割の一つでもある、などを主張した。