- 著者
-
田中 桂子
豊 浩子
- 出版者
- 明治学院大学国際学部
- 雑誌
- 明治学院大学国際学研究 = Meiji Gakuin review International & regional studies (ISSN:0918984X)
- 巻号頁・発行日
- vol.49, pp.1-23, 2016-03-31
本稿では大学教育におけるクリティカルシンキング(CT)の議論について考察する。CTの概念は、従来の論理主義がフェミニストや批判的リテラシーからの批判を受けて、新たな概念が模索、形成されつつある。日本の大学では昨今、CT教育の必要性が強く言われながら、CTの概念や教育の内容、方法に関する議論が広く共有されているか不明の点も多い。日本の学生がCTを学ぶことは困難ではないかという議論も存在する中、現在、日本のCT教育研究者間では、日本の学生がCTを育成・発揮する際に文化的価値観が抑制要因となるとされ、それを考慮した「協調型CT」や実践方法も提案されている。日本の学生に対するCT教育実践は試行錯誤の段階だが、CT教育には良き学習者・市民としての思考力を鍛え、さらには社会を批判的に見て変える力が育成される可能性がある。また、英語教育における実践からも、社会を問い直す複眼的なCT教育の可能性が示唆される。