- 著者
-
碓井 和弘
- 出版者
- 札幌学院大学総合研究所
- 雑誌
- 札幌学院大学経営論集 = Sapporo Gakuin University Review of Business Administration (ISSN:18841589)
- 巻号頁・発行日
- no.5, pp.43-52, 2013-03
伝統ある商業教育機関のシンボルには翼や杖,蛇がしばしば使われている。嚆矢は一橋大学である。それは,ギリシア神話のヘルメス,あるいはローマ神話のメルクリウスにまつわるものであり,ヨーロッパで繁栄していたベルギーに存在する商業学校のものを移入したのであった。ヘルメスは,豊穣神であるとともに,商業,盗み,雄弁,競技,道路,旅人の守護神でもあり,その最大の特徴は,コミュニケーション能力の高さと狡猾さである。しかし狡猾である商業には,不信感が付きまとう。商業が社会に存立する根拠が問われるのは,その商業への不信感が背景にある。M.ホールの「取引総数最小化の原理」は,取引においては人が移動する,と前提すれば理にかなっているように見えるが,情報技術の革新は状況を一変させた。この情報技術の革新は,マーケティングにも影響を与えている。『コトラーのマーケティング3.0』は,「参加」「グローバル化のパラドックス」「クリエイティブ社会」の3つを,時代を読み解くキーワードとしている。このマーケティングの変化を学ぶことは,商業教育の象徴と現代性を追求することにも繋がると考えた。