著者
杜 禹威
出版者
首都大学東京・都立大学社会学研究会
雑誌
社会学論考
巻号頁・発行日
no.33, pp.29-41, 2012-11-01

1966年~1976年にかけて,社会主義中国では,史上に前例のない全国規模の「プロレタリア文化大革命」が10年にわたり起こった. 文化大革命によって,さまざまな社会制度(政治,経済,教育など)は,大きな変化を迫られ, 極度の混乱が生じた. この社会状況のもとで,男女老若または, 地位,階層を問わず,全地域の全住民がこの運動に巻き込まれ,公的場面においても, 私的場面においても,物の考え方,行動様式,職業生活,家族生活および個人生活,価値観念と信仰体系等々, 何らかの影響をうけたことは間違いない.そこで本稿では,文化大革命(1966年~1976年)に遭遇した世代の多くは,自身の文革での辛い経験が,子どもの教育達成をめぐって親の教育歴と社会階層との関連性を実証的データにもとづいて検討することを目的としている. そして,事例の分析に基づいて,文化大革命が「親世代」の人間形成や個人生活および家族生活にどのように影響を及ぼしたのかについて,インタビュー対象者の親たちにそれぞれの人生に与えた影響を分析し「親世代」にとって彼らの成長に影響を与えた文革の体験,生活環境及び価値観などの差異によって,彼らがこどもの教育にはそれぞれ期待を抱いたものの,実際には子どもの教育に対する働きかけや,教育投資が異なっていることがわかった. その結果が,子ども世代の現在の地位達成状況につながっている.

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