著者
正躰 朝香
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 社会科学系列 (ISSN:02879719)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.71-85, 2018-03

国際関係論におけるアイデンティティ概念を概観した上で,地域統合とアイデンティティの関係性,特にヨーロッパ統合の深化においてアイデンティティの構築や強化が果たす役割を考察する。経済統合から政治統合へと射程を広げるにつれて,EUにおけるアイデンティティについての施策は,文化的多様性の尊重と同時に,共通のヨーロッパ文化を意識させることが「ヨーロッパ・アイデンティティ」を醸成するものとされ,統合への支持を高めるための政治プロジェクトとして進められてきた。 しかし,ユーロ危機,移民・難民の大量流入,英の離脱決定という困難な状況下,EUへの不満や極右勢力の躍進が著しい。現状で必要とされるのは,EUという地域統合体への帰属がもたらす恩恵の確認と,そのための義務や負荷を負うことへの意思の共有としての「EUアイデンティティ」の強化である。

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