- 著者
-
日野 純一
- 出版者
- 京都産業大学教職課程教育センター
- 雑誌
- 京都産業大学教職研究紀要 (ISSN:18839509)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, pp.19-49, 2016-03
近年の科学技術の進展のスピードは著しく、テクノロジー格差が人類の富の格差を生み、人類の幸不幸さえ決めている感がある。人間にとって科学技術の在り方がこれほど問われる時代はない。さらに大規模な自然災害や地球温暖化、エネルギー、食糧、水資源等にまつわる問題は、世界各国が協調、協力して英知を生み出し取り組まなければならない人類的課題である。阪神淡路大震災や東北大震災、福島原発事故問題を経験した我が国にとって、こうした人類的課題へ挑戦することが、我が国の科学技術の使命であり、世界の平和・共生に貢献するものであると考えられる。我が国がこうした使命を自覚し、これからも科学技術創造立国として持続可能な発展を続けるためには、小・中・高等学校における日本の理科教育を常に検証し、発展させていく必要がある。京都産業大学が創立50周年を迎えるにあたり、理学部に宇宙物理・気象学科を新設する。高等学校理科教育の中で最も低迷していると指摘されている物理・地学分野における教育の底上げに向けた取り組みに期待したい。 また次期学習指導要領の改訂骨子案では、従来の数学と理科の枠を超え、双方の知識や技能を総合的に活用する新たな選択科目「数理探究」を高等学校で創設するとも言われている。 そこで今一度公教育として行われてきた日本の理科教育の変遷を振り返るとともに、これからの理科教育の展望について考察してみる。