- 著者
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山下 喜代
- 雑誌
- 早稲田大学日本語研究教育センター紀要 (ISSN:0915440X)
- 巻号頁・発行日
- vol.6, pp.71-102, 1994-03-25
一般に, 語の構成要素すなわち形態素は, 単独で語を構成できるかできないかによって, 自立形式と結合形式とに分けられる.小稿では, 結合形式である語構成要素にはどのようなものがあり, どのような性格を持つのか, ということを調べるために, 「三省堂国語辞典第4版」を資料として, 国語辞典において「造語成分」として提示されている語構成要素を対象に調査した.そして, それら「造語成分」を語種別に, (1)出現度数と比率(2)構成単位数(3)自立用法の有無(4)品詞性と結合対象語基との統語的関係などの観点から分析することによって, その性格を明らかにし, 語構成要素としての位置づけを試みることにした.調査の結果, 「造語成分」は, 語種の違い, また「前部分」になるものか, 「後部分」になるものか, という結合位置の違いによって, かなり異なる性格を示すことが明らかになった.また「造語成分」が, 自立形式と結合形式, そして語基と接辞とに対立されている形態素の枠組みの中で, どのように位置づけられるかということについては, 自立形式である語基の語形と意味からの「造語成分化」という点を指摘した.つまり, ひとつは, 本来自立形式である語基が, 連濁や母音交替などの変音現象を起こし, 語形交替することによって結合形式化して「造語成分」として扱われるようになる場合である.もうひとつは, 自立形式である語基が, 結合用法でしか使われない意味を有し, 「造語成分」として機能する場合である.しかし, 自立形式の語基の造語成分化ということを考えるには, 他の要因も考慮する必要があるし, 「造語成分」の語構成要素としての位置づけをするためには, 「接辞」との相違が明確にされることが求められる.それらはすべて今後の課題と言える.