- 著者
-
田中 康雄
- 出版者
- 北海道大学大学院教育学研究科附属子ども発達臨床研究センター
- 雑誌
- 子ども発達臨床研究
- 巻号頁・発行日
- vol.1, pp.3-10, 2007-03-30
児童精神科医の視点から子どもたちの生きづらさについて、考察した。
生きづらさを問い続けるためには、生きるということ、さらには「豊かに生きる」ということを思索する必要がある。その意味で、生きがい感を持ちながら「生きる」ということを総括し、精神医学全体がもつ不確実性について言及した。故に近年問題視される発達障害という定義について、より熟考する必要性があることも強調した。
実際の子どもたちが抱える「生きづらさ」について提示しながら、解決に向け試みた。結果として、根源的にある、他者の意識について推量する想像力を行使することで、異質な他者を排除せず、認めあう自由を相互に手に入れることができるための「思いやり」の重要性を指摘した。
子ども発達臨床研究センターが、学際的に分野横断性と当事者性とをバランスよく持ち続け、鳥の目と蟻の目をもって、現在の社会状況に向き合える機能を持つことに期待したい。