著者
鄭 惠先
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.82-92, 2005-09

本研究の目的は,日本語と韓国語の「役割語」を対照することによって,よりリアルな日韓・韓日翻訳に役立てることである.本稿では,漫画を分析対象とし,一つ目に,意識調査で見られる日本語母語話者と韓国語母語話者の意識の差について,二つ目に,対訳作品で見られる両言語の役割語の相違点について考察した.その結果,つぎの7点が明らかになった,1)韓国語に比べ日本語のほうに役割語としての文末形式が発達している.2)日本語母語話者の場合,訳本では日本語の役割語の知識が十分生かせない.3)韓国語母語話者の場合,役割語への刷り込みが弱く,翻訳による影響を強く受けない.4)対訳作品から受けるイメージは,両言語の間で必ず一致するものではない.5)日本語役割語では性別的な特徴,韓国語役割語では年齢的な特徴が表れやすい.6)日本語でも韓国語でも,方言は人物像を連想する重要な指標となる.7)時代を連想する言語形式は訳本の中で現代風に訳される傾向が多い.

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