著者
孫 詩彧
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.129, pp.1-15, 2017-12-22

本研究は権力過程に焦点を当て,先行研究を批判的に整理するものである。夫妻の権力関係を議論する際,研究者による測定と当事者自らの評価に不一致が見られた。それを説明するため,権力がどのように作用するかの過程に注目して研究がなされてきた。これまでの研究では次の二つの次元から過程が捉えられてきた。第一に「家庭内重大事項の最終的意思決定に至るまでのプロセス」,第二に夫妻の権力関係そのものが形成されるプロセスが挙げられる。資源の内容を経済的から文化的,情緒的なものなどに広げつつ,社会構造と関連付けて夫妻間の意識的・無意識的な交渉,依存関係,権力の顕在的・潜在的・不可視的な形とその規定要因が議論されてきた。だがほとんどの研究は権力を客体化し,能力として捉えるため,権力の過程が二次的な存在となる。この問題は近年の研究において指摘され,権力を関係として捉え直す視点から研究が展開されつつある。

言及状況

Twitter (2 users, 3 posts, 0 favorites)

収集済み URL リスト