- 著者
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冨田 睦雄
- 巻号頁・発行日
- 1998-03-25
本研究は、ブラシレス直流モータの位置・速度センサレス制御において、位置・速度推定の安定性が確保できる方法を提案し、センサレスでブラシレス直流モータを始動ならびに低速運転することのできる方法を提案することである。本論文は、次の6章から構成される。第1章では、本論文の背景と目的について示した。第2章では、ブラシレス直流モータの界磁と速度を推定するための適応スライディングオブザーバの構成法について述べる。位置は、推定した界磁の方向から求める。リアプノフの安定論を用い、速度適応同定則を導出し、速度推定誤差にロバストな磁束推定を実現する極配置設計について述べる。さらに、適応スライディングオブザーバを用いたブラシレス直流モータの位置・速度センサレス制御の有効性をシミュレーションにより確認する。第3章では、ブラシレス直流モータの速度起電力を推定するための外乱オブザーバの構成法について述べる。位置は、推定した速度起電力の方向から求める。ポポフの超安定論によって安定性を保証し、推定した速度起電力を用いた速度適応同定について述べる。さらに、DSP(Digital Signal Processor)を用いて、外乱オブザーバと速度適応同定を実機実装し、ブラシレス直流モータの位置・速度センサレス制御の有効性を確認する。第4章では、これまで困難とされてきた速度起電力が発生しない停止状態での位置推定法について述べる。回転子表面に導電性非磁性材料を貼付することにより、インダクタンスが変化する原理をモデルを用いて示す。次に、インダクタンスの変化により、2相通電を行なった時に残りの1相の電圧が、回転子位置に従って変化することを利用した停止位置の推定法について述べる。さらにマイクロコンピュータを用いた実験によって、本方法の有効性を確認する。第5章では、モータを零速度から速度起電力を用いたセンサレス駆動が可能となる速度まで加速する方法について述べる。停止状態の通電は、第4章で提案した停止位置推定法を用いる。最初に、120度形通電(2相通電)で運転する時に、残りの1相にわずかな速度起電力とともに、インダクタンスの変化による電圧の変化が重畳することを示す。次に、わずかに発生する速度起電力の影響を除去し、回転子の位置に従って変化する電圧を利用し、センサレス運転が可能となることを示す。さらに、マイクロコンピュータを用いた実験によって、本方法の有効性を確認する。第6章は、本研究で得られた成果をまとめ、望ましいセンサレス制御について述べ、今後の課題について述べる。