著者
恵良田 真由美 千原 光雄
出版者
筑波大学菅平高原実験センター
雑誌
菅平高原実験センター研究報告 (ISSN:09136800)
巻号頁・発行日
no.8, pp.57-69, 1987-03-25

Collections of cryptomonads were made twice in the Sugadaira-Moor (Nagano Prefecture, Japan) in July, 1982 and November, 1985. The specimens were cultured in unialgal conditon and then examined by the light microscope. As a result, it was recognized that threr were 10 species of cryptomonads, which belonged to four genera and two families, occurred in this moor. Among these species, six were found for the first time in Japan and three which belong to the genus Cryptomonas appeared to be undescribed taxa.クリプト藻植物は2本の鞭毛をもつ単細胞性藻類の一群である。本植物は細胞構造が特徴的であること、および光合成補助色素としてフイコピリンをもつことなどから,他の藻群からよく区別できるまとまった群であるとされている。しかしながら,識別形質があまりにも少ないこと、および細胞が脆弱で容易にこわれてしまい充分な観察がしにくいことなどから,種の階級の分類は非常に困難である。特にわが国においては本植物群の分類学的研究は皆無といってよい。著者らはわが国におけるクリプト藻植物相の知見を蓄積する目的で、国内各地より採集した材料について調査研究を進めている。本報告はその一環として行なった調査の結果である。菅平湿原は筑波大学菅平高原実験センターの西方約2kmに位置する典型的な山地湿原であり(Fig 1.)クリプト藻のみならず多様な淡水藻類の生育が知られている。本報告では菅平湿原から採集したクリプト藻類のうち分類群として明確に認識された4属10種を扱う。クリプト藻類は淡水産のものだけでも全世界で100種以上が記載されており、しかもそれらの大部分は冷涼なドイツ・スイス・オーストリア・北欧を中心に報告されていることから,今後本湿原の調査を重ねることにより、さらに新たな分類群が見出されるものと期待される。

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