- 著者
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羽鳥 徳太郎
- 出版者
- 東京大学地震研究所
- 雑誌
- 東京大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
- 巻号頁・発行日
- vol.61, no.1, pp.143-157, 1986-08-04
秋田県南部の象潟・金浦海岸に顕著な地殻変動と地震・津波被害をもたらした文化元年(1804年)象潟地震について,新史料を加えて震度分布を調べ,地震の規模を検討した.一方,津波史料をもとに各地の津波の高さを現地調査し,津波の規模および発生機構を考察した.震度6の範囲が本荘~酒田間60kmに及んだことは,今村の報告(1921)と変わりはないが,震度4の地域は青森・宮城県および新潟県下にまたがつた.その広がりから地震のマグニチュードはM=7.3と推定される.海岸の地盤高をふまえて津波の被害状況をみると,津波の高さは象潟付近で平均海面上4~5m,酒田では3~4mと推定される.そのほか周辺の波高分布から判断すれば,津波マグニチュード(今村・飯田スケール)はm=1.5と格付けできる.震度・地殻変動の分布を考え合せると,波源域の長径は本荘~酒田沿岸南北方向に,60kmと推定される.津波の規模は地震の規模に対して標準以上に大きく,この津波は高角の逆断層で起こされたものと考えられる.