著者
阿部 勝征
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大學地震研究所彙報 = Bulletin of the Earthquake Research Institute, University of Tokyo (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.51-69, 1989-06-30

津波マグニチュードMtの決定式と地震断層パラメターの相似則に基づいて,地震のマグニチュードから津波の高さを予測する方法を導く.その際にマグニチュードや津波高の基本的性質および津波励起の地域性を適当に考慮することによって予測の精度を高める.特異な津波地震を除いて,関係式log Ht=Mw-log Δ-5.55+Cから得られる予測高Ht(m)は津波の伝播距離Δ(km)付近での区間平均高を近似し,2Htはその付近での最高値を近似する.区間平均高の最大値は簡単な関係式logHr=0.5Mw-3.3+Cから得られる予測高Hr(m)で見積られる.ここにMwは地震のモーメント・マグニチュード,Cは定数であり,太平洋側の津波にはC=0,日本海側の津波にはC=0.2がそれぞれ適用される.適切な考慮のもとではMwの代わりに表面波マグニチュードや気象庁マグニチュードを利用することができる.地震直後の迅速な予測に利用できるようにこれらの関係式を一枚の予測ダイアグラムにまとめることができる.一方,遠地津波に対する予測式はlog Ht=Mw-Bによって与えられる.定数Bの値として,南米からの津波にはB=8.8,アラスカやアリューシャンからの津波にはB=9.1,カムチャッカや千島からの津波にはB=8.6がそれぞれ適用される.予測法の信頼性を検討するために,過去の津波について実測高と推定値とを統計的に比較してみると,大局的にみる限り,両者間のばらつきの程度は津波数値シミュレーションの場合とそれほど違わない.

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